失敗しない! 電子契約の導入で絶対に気をつけたいこと
目次
電子契約の導入で失敗しないために(この記事からわかること)
この記事は、電子契約を導入する際に「落とし穴」にはまらないために、絶対に気をつけないといけないことを記載しています。
「電子契約の導入を決めたので、社内運用を考えなければらならい」「電子契約の導入をこれから検討しよう」という方に向けて書いています。
申し訳ないですが、すでに導入して運用を開始した方はあまり読まない方が良いと思います。
もう手遅れの場合もあるので、後悔することになってもいけませんので。
なお、「電子契約の導入に向けた課題」についても別記事を掲載していますので、よろしければご覧ください。
>>電子契約の導入に向けた課題とは?(その1)-基礎知識
>>電子契約の導入に向けた課題とは?(その2)ー基礎知識(続編)
>>電子契約の導入に向けた課題とは?(その3)ー締結後の契約書の管理
気づいていますか? 電子契約導入の際の「落とし穴」
私は、普段の仕事で、企業における契約管理の運用構築のお手伝いをしています。
お手伝いするのは、名前を聞けば誰もが知っているような規模の大きな会社が多いです。
そういった大きな会社ほど、電子契約のベンダー選定・運用フローの構築・運用開始後のフォローアップなど、自力で行いたいという会社が圧倒的に多いです。
しかし、スムーズに進められる会社ばかりではありません。
自力でプロジェクトを進める中で、こんな声をホントによく耳にします。
「電子契約の導入を決めたけれど、社内ルールがまとまらず運用開始のメドが立たない」
「ベンダーを決めてから運用を細かく検討し始めたが、いまになって違うベンダーにすべきだったと後悔している」
「当初のコスト想定から大きく膨れ上がってしまい、正直なところ費用対効果が見込めない」
「契約のデジタル化は経営層からの指示なので、費用と負荷が増えてもやるしかない」
「落とし穴」にはまる本質的な理由
なぜ、こういった「落とし穴」にはまる会社が多いのでしょうか。
結論から申します。
これは、自社を含めて、これまでに目にしてきた多くの企業の実例から断言できます。
それは、「電子契約の導入とは、分断された新しいフローを作ること」だからです。
この本質を理解しておかないと、失敗して落とし穴にはまる可能性が高まってしまいます。
「分断された新しいフロー」ができてしまうことの2つの意味
「分断された新しいフローを作る」とはどういうことでしょうか?
これは2つ意味があります。
1つは、一連のプロセスの一部だけがデジタル化されてしまう「独立化」です。
稟議申請の手続き、捺印申請手続き、請求・支払い処理といった業務フローは、どこの会社でもすでに存在していて、電子契約が導入されたからといって変わることはありません。
従来であれば、これらのプロセスに「契約書」という紙が一緒に動けばよかったでしょう。
ところが、電子契約の捺印手続きは、これらとは違う独立のフローになります。
ベンダーが提供しているプラットフォーム上で運用が進むからです。
この「独立化」が進むことで、プロセス間の「つなぎ」が必要になってきます。
もう1つの意味は、同種のプロセスが2つに分岐してしまう「並列化」です。
契約のデジタル化が、その他の業務のデジタル化と大きく異なる点があります。
それは、電子契約を導入したとしても、それ以降に発生するすべての契約が電子になるわけではない、ということです。
そのため、「紙契約書の業務フロー」と「電子契約の業務フロー」が並列に分かれてしまいます。
もっとマズいごとに、「電子契約の業務フロー」はさらに細かく分かれてしまいます。
電子契約のベンダーが複数あって、自社ではコントロールできないからです。
にもかかわらず、分岐して並列に分かれていったフローは、下流で再び統合することが必要になります。
契約書は、どんな方式で締結しようとも、締結後の管理が必要となるためです。
それでも「落とし穴」にはまる企業が多いのはなぜか?
こういった本質を理解していたとしても、「落とし穴」にはまる企業が後を絶ちません。
担当者の方が本質を理解されていても、問題に対応しきれないケースが多いのです。
そういった企業では、こんな構図になっていることが少なくありません。
1 社内の業務フローや運用ルールを事前に綿密に整備しておくこと
2 社内の既存システムとのつなぎも考えてプロセスを設計すること
3 これらを踏まえて費用対効果を事前に把握すること
しかし、多くの担当者がこう思っています。
「それができれば、苦労はしないって!」
なぜ、こうなってしまうのでしょうか?
私の経験上、このようなギャップが生じる理由ははっきりしています。
それは、担当者にとって、検討や導入を支援する存在がないからです。
電子契約の検討・導入に当たっては、法務知識のほかにベンダーのサービスに関する理解、システムに関する理解が不可欠です。
こういった横断的な知識を持って意思決定をサポートしてくれる存在が、決定的に欠如しているのです。
「あれ? 電子契約のベンダーがサポートしてくれるんじゃないの?」
そう思われると思いますが、現実は少しハードルがあると言わざるを得ないでしょう。
電子契約のベンダー側の営業体制は、かなり合理的に分業化されています。
そのため、一人の担当者の守備範囲が限られていて、それ以外のことに知識と関心が薄いことがあります。
丁寧な説明・対応を期待しても、「WEBサイトに動画があるので見てください」という感じで、これからやらなければいけないことが体系化できないのです。
導入時の比較検討まではともかく、導入決定後の社内でのローンチについては、ベンダーからのサポートをうけようとすれば、高額なコンサルティング費用を支払うことを覚悟せざるを得ません。
「落とし穴」にはまったA社の事例
実際にご相談をいただいたある会社(A社)のケースをご紹介します。
A社さんでは、経営トップの強い意向もあって電子契約の導入を検討。
ある電子契約の導入を決めました。
導入するサービスを比較した際、一番の判断基準は費用対効果。
そのため、選択の決め手になったのは価格でした。
ミニマムのプランで月額1万円。
印紙代の節減、製本工数の削減、郵送費用の削減などを考えると、年間に発生する契約の20%を電子契約にすることができれば、費用対効果が出ることが分かりました。
そのうえで、社内の詳細な運用検討に着手しました。
各部署からのヒアリングも行い、運用を詰めていった結果、2つの要求が出てきました。
① 電子契約を承認するのは、管理職に限定したい。
② 各部署で締結した電子契約は、自部署のものはすべて見られるようにして、他の部署からは自由に見られないようにしたい
ところが、ここで大きな問題が発覚します。
よく調べてみると、この2つの要求はミニマムのプランでは対応できないことが分かったのです。
これに対応するには上位プランに入る必要があります。
しかし、その上位プランは月額10万円。
この上位プランに入ってしまうと、もはや費用対効果は出せません。
ベンダーにも相談してみましたが、「上位プランに入ってください」ということで、ご担当は途方に暮れてしまっていました。
そんなタイミングで、偶然ご相談をいただきました。
このA社さんのケースでは、導入検討時点での検討の甘さが原因ではあります。
しかし、こういったケースは決して少なくないと思います。
検討の始めから、ご担当の方をサポートする存在がいたとしたら、A社さんはこのような状態にはならなかったはずです。
A社さんの場合には、導入後にご相談をいただいたのですが、結果して、上位プランに入ることなく費用対効果を出すことができました。(少しお金を使っていただきましたが)
電子契約の検討・導入には手順がある
自社における電子契約の導入や、他の会社における導入支援をしてきた経験から、電子契約の検討・導入には「押さえるべきポイント」が確実にあります。
それらは、ざっと並べるだけでも以下のようなことがあります。
現状の契約業務にかかっている件数・工数・コストの把握
電子契約に変えていくべき範囲の確定、導入による効果の積算
運用ルールの検討・整理(無権代理の防止策、承認ルール、締結後の保管ルール等々)
運用フローの整理、リーガルチェックや捺印申請などの既存フローとの調整
相手方からの振り出しの場合の対応、相手方指定の方式で締結する場合のルール
要件に合わせたベンダーの選定
締結後の契約の管理、依然として残る紙契約書との管理の統合
これらの確実なプロジェクトマネジメント
これらについては、ニーズがあれば体系化して整理していこうと思っています。
ご意見を「お問い合わせ」からいただけますと、大変助かります。
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