【5分で読める要約】「良い戦略 悪い戦略」はリーダーにおすすめ-勝てる戦略の鍵は「選択と集中」

リチャード・P・ルメルト「良い戦略 悪い戦略」日本経済新聞出版、2012年

「事業を立て直したいが、どこに活路を見いだせば良いのか分からない」
「部署のリーダーとして事業戦略を立てたが、改めて見直しをていきたい」
「時代の変化に合わせた戦略に変えていきたい」


そんな立場にいるリーダーの方には、この本は最適です。

この「良い戦略 悪い戦略」は、軍事やビジネスなどの事例をもとにそれを抽象化することで、そこから学べるエッセンスを抽出してくれている本です。

戦略の成功、戦略の失敗を自ら経験しなくとも、擬似的に体験することができて、学びの多い良書です。

自分が立てた戦略や計画がある方は、この本を読んでからもう一度自身の戦略・計画を検証してみると、気づくことが多いと思います。

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「良い戦略 悪い戦略」が説いていること【選択と集中】

悪い戦略とは【4つの特徴】

ルメルトは「悪い戦略」の特徴を4つあげています。
「悪い戦略」の裏返ししとして、「良い戦略」を捉えているといってよいでしょう。

空疎である

わかりきったことを、やたらと複雑に書いている戦略や計画のことです。
計画書の厚さがあるものは、たいていこれです。

重大な問題に取り組まない

現状追認ばかりで、変革に踏み込むことを避けているものです。
我が国の少子化問題、社会保障問題などは、ずっとこれです。

目標を戦略と取り違えている

「20xx年までに売上○億円」は、ただの目標です。
どうやって到達するかが分かりません。結果して「がんばれ」になりがちです。
サッカー日本代表でよく言われる「決定力不足」も「得点が入らなかった」のただの言い換えです。

まちがった戦略目標を掲げる

「あれもこれも」詰まった、結局何をしてよいのか分からない目標。
どうしたって無理な非現実的な目標。
どちらも、足が止まってしまいます。

良い戦略とは【選択×集中=シンプル化】

良い戦略とは何か?

一言でいうと、良い戦略とは「選択と集中」です。

この本では「良い戦略の基本構造」として、診断、基本方針、行動の3つをあげています。

「診断」とは、状況を観察して、自社が取り組むべき課題を見極めること。
顧客ニーズ、自社の状況、競合の動きなどから、解決しなければいけない問題を見極めることだといえます。

「基本方針」とは、診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性・方針を示すこと。
なぜその課題に取り組むのか、その課題に取り組む大枠の方向性・計画・ロードマップ。
これらがあることで、そこから細分化される戦術・タスクを考える際の指針になります。
基本方針がしっかりしていれば、下位の戦術・タスクを部下が自律的に考えることも可能になります。

「行動」とは、基本方針を実現するために設計された一連の行動のこと。
実行のない戦略は、ただの願望です。

そして、この3つによってなされることは「決定的な一点に努力を集中すること」。

やらないことを決めて、やるべきことにすべてのリソース・労力を集中させる。

「やった方がいいこと」はたくさんあるが、そのなかでも「最もやるべきこと」だけに力を集中させること。

「最もやるべきこと」を選択して、そこに「集中」させることが、最も重要なことです。

戦国時代の戦いにおいて敵の大将の首だけを狙う、そんなことを彷彿とさせます。

「選択」「集中」がなされるから、良い戦略はシンプルになります。
シンプルだから、メンバーにとっては理解もしやすいし、行動の統制も取りやすい。
良いことばかりです。

良い戦略に活かされる強みの源泉

正しく「選択と集中」をするためには、自社が活かすべき「強み」を見極めることが重要です。

ルメルトは、「強み」の源泉として、テコ入れ効果、近い目標、鎖構造、設計、フォーカス、健全な成長、優位性、ダイナミクス、慣性とエントロピーの打破をあげています。

そのなかでも重要なのは、やはり「フォーカス」でしょう。

価格優位性のある大企業に対抗するため、小ロット生産にフォーカスして様々な要求に応えられる仕組みを自らの強みとしたクラウン・コルク&シールのケーススタディは、とくに業界中位の会社、中小企業などにとっては非常に示唆に富んだ内容です。

戦略論の世界では、一点突破はニッチャーの戦略として描かれることが多いです。
でも、実際にはほとんどの会社で一点突破の「フォーカス」は有効だと考えて良いでしょう。

「良い戦略 悪い戦略」わたしの活用法

わたしは15名ほどの部署を率いる立場です。
毎年、事業計画を立てて、メンバーに方向性を示すことを続けています。

この本を読んで、自分が立てた計画を見直してみました。

最初の感想は「色々なことが書いてあるなぁ」。

きっと次のような悪いサイクルが回っているような気がしました。

複雑なことがたくさん書いてあると、何がいちばん大事なことかが分からない。
人数も予算も限られる中で、どこにフォーカスすればよいかがが分からない。
結局、人的リソースに対してやることが多いから、実施されない計画が出てくる。
実施されないから、自然と計画が忘れられていく。

これからその修正をしようと思います。
気づいたから、行動に起こすことが大事ですよね。

「良い戦略 悪い戦略」書籍情報

リチャード・P・ルメルト (著), 村井 章子 (翻訳)
「良い戦略、悪い戦略」日本経済新聞出版、2012年