【5分で読める要約】エックハルト・トール「さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる」
エックハルト・トール「さとりを開くと人生はシンプルで楽になる」徳間書店
「いま、この瞬間、ここに在るとき」
この言葉は本の帯にも書かれている言葉です。
こういった言葉は、本当に頻繁に目にするようになりました。
もちろん、海外の成功者が語っている場合も多いのですが、禅の世界でも古くからいわれています。
著者エックハルト・トールは、29歳のときに体験した霊的な体験から、自身が把握した「悟り」とも言うべき境地をこの本にまとめています。
対談形式で書かれているので、わかりにくい言葉や「そうかなぁ?」と思う点を突っ込んでくれているのがうれしいところです。
スピリチュアル系の本とも捉えられますが、物事の本質にたどり着くためのマインドの本だと考えると、実生活や仕事で活用を広げることができるのではないでしょうか。
目次
トールが伝える、たったひとつのこと
過去も未来も幻にすぎない。
私たちは、過去に生まれて、いまを生き、未来へ向かっている。
けれども、過去は、過ぎ去ってしまったもので、どう変えることもできない。
また、未来は、まだ到来していないので、どうすることもできない。
ただひとつのできることは、「いま、この瞬間」を生きること。
「あのとき、こうしておけば良かった」と過去を嘆いても何も変わらない。
逆に、「いつか、こうなるぞ」と未来だけを見ても実現ができない。
この2つは、いずれも現実逃避だ。
できることは、「いま、この瞬間」を積み重ねていくことだけ。
「いま、この瞬間」を生きるには、過去からも未来からも自由になること
人の思考は、過去の視点から現在をながめ、過去の基準で判断を下す傾向がある。
だから、自分が見ていると思っている世界は、すべて「現在の現実を過去のフィルタを通してみたもの」で、すっかりゆがんでしまっている。
・頭の中で、何度も繰り返されるセリフ
・何かをするたびに、思い起こされる感情
・数年にわたり、頭のなかでかけ続けられた「古いレコード」
そういった過去から蓄積してきた自分の感情が、「信念」「アイデンティティ」という見え方で思考を覆ってしまう。
「ほんとうの自分」なんて、存在しますか?
同じように、来たるべき未来を美化しすぎると、それは現在への強烈な不満となって表われる。
目標達成への強すぎる意識によって、現在が、単に未来の手段になってしまう。
そうなると、現在は「未来に向けた苦行」に変わってしまう。
だから、いずれの場合も「いま、この瞬間」を客観的に眺めることができず、抵抗を刷る状態になってしまう。
その結果、過去や未来に囚われた思考に覆われて、ネガティブな思考を生み、本人にとって最大の敵になってしまう。
ネガティブな要素がアイデンティティになると、もうポジティブな変化を望まなくなる。
すると無意識のうちに、人生のポジティブな部分を無視し、拒否し、変化が起ころうとするのを邪魔する。
この状態から抜け出て、自由にならなければいけない。
思考を過去・未来から自由にするには、現在のすべてを受け容れること
人にとって苦しみの度合いは、自分がどれだけ「いま、この瞬間」に抵抗しているかに比例している。
だから、必要なことは「いま、この瞬間」の客観的状況を受け容れること。
客観的に「すでにそうであるもの」は、評価を加えずにそのまま受け容れる。
評価という思考を加えると、苦しみが増す。あるがままに、無条件に受け入れる。
客観的な状況に評価を加えると、それは問題に変わってしまい、現在への苦しみ変わってしまう。
現在のすべてを受け容れるには、思考ではなく動作に集中すること
だが、私たちにとって「すべてを受け容れる」と言われても、そんなことは簡単にはできない。
では、どうすれば良いのか?
それをトールは、「単なる手段として行なっている動作にすべてを集中させる」ことだと説く。
ひたすら、動き、働き、走る。
そして、その行動を楽しむ。
そうすることで、思考活動を遮断させて、100%「いま」に集中させられるのだと。
その状態でこそ、クリエイティブなアイディアがでてくるのだと。
そして、自分の思考を客観的に観察する
そして、トールは、自分の感情に意識のすべてを向けて、痛みを観察すべきだと言う。
全身の細胞のすべてをもって、「いま」に在ることで、暗闇を光で照らす意識の炎になるのだと。
トールの言葉と禅の教え
こういったトールの考えを聞いて、わたしは「禅の教えと同じことを言っているな」と即座に感じました。
仏教の世界では、古くからの「悟りを開くために修行が必要」という考え方が主流だったが、禅の世界では「日常の生活の行為・行動なかに悟りがある」と考えるようになった。
只管打座
ただひたすら、座禅をし続けて、その状態に心を集中させることによって、仏としての心証があらわれる、とされるようなりました。
食事をつくる、掃除をする、といった動作も同様。
この動作に没入して、ひたすら「なりきる」ことの重要さが説かれています。
トールの言葉は、こういった禅の言葉と同じ内容を説いているように思えます。
「今を生きることが悟りなのであって、いつか得られる状態ではない」
この言葉はトールの言葉ですが、道元が説いた言葉だとしてもまったく違和感がありません。
もちろん、トール以外にも最近の経営者たちも、多くの人たちが同じ趣旨のことを言っています。
この本の活かし方
この本は、若干、難解なところがあると思います。
内容を理解するところと、それを実生活で実践するところには、若干の乖離を感じます。
書かれている内容について、まずはトールが何を言いたいのか理解することに集中すると良いと思います。
(疑問や反論は最小限にとどめて)
そうすれば、生活の中でネガティブな感情に囚われたときに、「あぁ、そうか、トールが言っていた状況に陥っているわけか」と理解ができて、対処の方法も見えてくるのではないでしょうか。