【5分で読める要約】「図解 影響力の心理学」はビジネス心理学の入門として最適【心理操作マーケティングの体系書】

2023年1月7日

中野明「図解 影響力の心理学」学研プラス、2021年

心理学の本というと、少しハードルが高く感じるかもしれません。

でも、この本は具体例や図解を駆使して分かりやすく、しかも体系的にしてくれているのでありがたいです。

「交渉でこちらの都合の良いように相手を導く方法を知りたい」
「営業ですぐに使える心理操作スキルを学びたい」
「心理学を活用したマーケティングを実践したい」


こんなことを考えていませんか?

ビジネス心理学の本というとロバート・チャルディーニの「影響力の武器」が有名ですが、この「影響力の心理学」はそれをさらに要約して、日本に暮らす我々に分かりやすく解説してくれています。

ビジネスシーンで心理学を駆使してきたいと考えている方にとって、入門書としての最適の一冊です。

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「影響力の心理学」が説く5つの心理

「YES」と言ってしまう心理学

このなかで述べられているなかで、最重要なのは「返報性の原理」でしょう。

人は何かをしてもらったら、相手に対してお返しをしようとする。

たとえ小さなモノでも、価値の低いモノでも。

物をもらった場合に限りません。
情報をもらった場合、譲歩をしてくれた場合も。

相手のことが嫌いだったとしても、人は相手にお返しをしようとします。

まず先に相手に対して貢献をすれば、その後のお願いで「yes」を引き出すことにグッと近づくことができるといえます。

この「返報性の原理」以外にも、サクラの動きに引きずられる「多数派同調バイアス」、象徴的な第一印象に引きずられる「ハロー効果」などが記載されていますが、わたしが面白いと思ったのは「コントラスト効果」

「コントラスト効果」は、同じものでも比較対象があるとその評価が変わるというもの。

たとえば、3つの価格帯の商品・サービスのラインナップをよく見かけませんか?

そうすると自然と真ん中が選ばれることが多いです。

そう。「松」「竹」「梅」とあるとき、企業がいちばん売りたいのは「竹」。
「竹」に「YES」と言わせるために、「松」と「梅」が設定されているわけです。

「損をしたくない」の心理学

人は「利得」よりも「損失」を約2倍重大に受け止める。

この理屈にしたがえば、たとえばダイエット効果のあるサプリメントであれば「痩せられます」よりも「このままでは成人病になります」とか「このままでは異性に嫌われます」の方がよいことになります。

これにロバート・チャルディーニがいう「一貫性の原理」を掛け合わせれば、こう問いかけることがさらによいことになります。

「このままの食生活を続けたら、どうなってしまうと思いますか?」

損失を回避することへの意識が強いから、期待値の低い方を選択してしまう。

A.100%の確率で100円もらえる(期待値100円)
B.80%の確率で200円もらえるが、20%の確率で0円になる(期待値160円)

理屈で考えると期待値の高いBを選択すべきなのですが、損失回避の心理が働くためAが選択されることが多いのだそうです。

逆にいえば、客観的には劣る商品・サービスであっても、損失回避の心理を応用すれば、選択してもらえる可能性があるわけです。

「フレーミング」の心理学

フレーミングという言葉を使っていますが「アンカリング」とまとめる方がフィットする気がします。

人は意思決定の際、提示された「判断基準」に影響されてしまう。

アンカーとは船の”いかり”のこと。

営業においては、先に見積金額を出したら、その金額がアンカー。
そこから交渉が始まります。

だから「値ごろ感」が形成されないようなソリューションサービスの営業マンは、相手の予算を知るまではできるだけ価格を口にしません。
あるいは、高めの価格を指しておいて、事後の交渉で落としどころにもっていくわけです。

アンカーと譲歩を組み合わせたところに「落としどころ」が見いだせるでしょう。

「前回の価格はXX円。最低賃金が○%あがったのでYY円にすべきところ、今後の取引継続を見込んでZZ円で提示させていただく。」
「前回の依頼時は1個XX円。今回は発注量が減ったので単価を上げるべきところ、次回のロットもご発注を確約いただけるならば単価は据え置かせていただく。」

交渉における上限・下限は、互いにとってのアンカーになります。
その間で合意ができれば、双方にとってハッピーな関係を築けるはずです。

「選択」の心理学

選択肢が多すぎると、人は判断不能に陥る。

選択肢は多いほど良い、と考えてしまいがちです。
しかし、実際には選択肢が多すぎると、人は選べなくなってしまいます。

認知の限界を超えると、選択という行為を放棄するということなのでしょう。

「松」「竹」「梅」
3つくらいの選択肢が、いちばん適していると思われます。

また、人はサンクコストを嫌うというのも重要な気づきです。

投資やギャンブルでお金をつかう。
回収ができないまま終えることができず、追加の投資をする選択をしがちになります。

「このままでは、せっかく導入したXXXが効果を発揮しないまま終わりますよ。」

こんな言葉は、きっと相手の心に刺さることでしょう。

「制御」の心理学

人はものごとの目立つ部分に着目し、それを過大に評価する。

これを「代表性ヒューリスティック」というそうです。

これは、個人的には因果関係のロジックが逆で、論理よりも直感が勝つからだと思われます。

人は直感で意思決定する。
その後で、その意思決定を裏付ける情報を見つけ出す思考をする。


だからその結果、目立つ部分を過大に評価したように見えるのだと思います。

直感で意思決定するからこそ、この本で述べられているような心理的な影響を相手に与えることは、営業や交渉の場面では非常に重要になります。

「影響力の心理学」わたしの活用法

わたしは営業マンです。

どちらかといえばロバート・チャルディーニの「影響力の武器」を応用して、相手との会話の中で色々なスキルを実践してきました。

「影響力の心理学」でいうと、自身がこれまで実践してきたことの「意味づけ」として活用しました。

たとえば、サンクコストの回避を意識させる場面では、「せっかく…のに」を多用してきました。
相手がやろうとした目的、ここまで取り組んできたことを肯定的に評価して、そのうえで「せっかくここまでやったのに、ここでやめたらもったいない」というように伝えてあげる感じです。

これを「サンクコストの回避」と呼ぶことは意識していませんでしたので、改めて意味を認識したことになります。
マニュアル化や教育なので他人に伝えるためには、必要なことだと思います。

ちなみに心理学的なスキルは、見方によっては「相手をだます」という感じもするかもしれませんが、わたしはコンサルテーションだと思っています。相手との会話の応酬の中で、相手を導いてあげることができる技術だと思っています。

「影響力の心理学」書籍情報

中野明 (著)
「図解 影響力の心理学-海外の心理実験で証明された『相手にYES!と言わせる技術』」
学研プラス、2021年。