【5分で読める要約】「無印良品は、仕組みが9割」はすべてのリーダーにおすすめ-マニュアルMUJIGRAMがつくる仕事の仕組み

2023年1月7日

松井忠三「無印良品は、仕組みが9割」角川書店、2013年

一次は先行きが見通せなくなった無印良品を再生できた秘密は、徹底した仕事の仕組み化にあった。

無印良品を展開する株式会社良品計画の会長である松井忠三氏。
無印を企業組織として成長させてきた松井氏が説く、マニュアル「MUJIGRAM」による仕事の仕組み化。
経験や勘で「人」が仕事をする状態から、マニュアルやルールによって「仕組み」が仕事をする状態をつくることが、組織としてのパフォーマンスを向上させる秘訣であることを、この本は教えてくれます。

「上司である自分はがんばっているのに、部下は動いてくれない」
「決まりごとを作ったのに、その通りに守られない」

そんな悩みを抱えているリーダーの方、とくにこの本を読んでほしいです。
私もそんな一人です。

組織の課題を解決するヒントがたくさん詰まった一冊です。


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「無印良品は、仕組みが9割」が説く3つの大切なこと

仕事のコツの言語化・ビジュアル化で、人から仕組みへ

「マニュアル化」「標準化」というと、工場や現場での仕事を思い浮かべるかもしれません。

デスクワークの事務仕事、企画などのブレインワーク、営業・接客などの対人的な仕事などでは、「特殊な仕事なのでマニュアル化が難しい」と考えている企業もまだまだ残っていると思います。

しかし、それらの仕事を含めて、あらゆる仕事は標準化できます。

店頭のディスプレイの仕方、商品名のつけかた、接客時の声掛けの仕方など、個人差が出やすい仕事。
ときとして「センス」や「タイミング」などの抽象的な言葉で片付けられてしまいがちですが、これもそのポイントを言葉に表したり、図や写真で解説することはできます。

マネキンのディスプレイは、逆三角形になるように配置する
商品名は、まず何であるかがお客様に分かるようにつける 等々

前任の担当者が経験によって会得してきたポイントを言葉にして伝えていけば、後任の担当者は同じことをゼロから辿り、同じ失敗や苦労を経験する必要はないでしょう。
代わりに、マニュアルに書かれた決まりが基準になって、もっと良くするための方法・もっとうまくやるための方法を考えられるはずです。

仕事のポイントの言語化・ビジュアル化こそが、標準化・マニュアル化の大切なポイントです。

こうして「人」に焦点を当てるのではなく、「ルール」「仕組み」に焦点を当てていけば、組織は変わります。
「鈴木さんはよく知っている」「田中さんはセンスがある」という「人」に頼る状態から、鈴木さんや田中さんのやっていることのエッセンスをみんなが共有できる状態になります。

ベテランだけに頼るではなく、仕事のポイントをみんなが共有することができるようになれば、ベテランに仕事が集中して休めないこともなくなりますし、能力のある人はさらに高いレベルの仕事に挑戦することができるようになります。

組織としても良いことばかりです。

目的こそが、マニュアルが伝わるかどうかを決める

マニュアルを書くときに大事なこと、それは「目的」を必ず記載することです。

そのルール、何のために定められていますか?

人の頭は、理屈で成り立っています。
新しいルールを定めたとき、それがなぜ定められているのか、目的・理由があると理解・納得が進みます。

また、マニュアルを作った人が職場を去った後、ルールだけが職場に残ります。
すると、マニュアルを定めた当時、どういう理由・目的でそのルールを定めたのか、分からなくなってしまうケースもあるのではないでしょうか。

そうなると、作成当時と事情が変わったのに定められたルールが機械的に実行され続けたり、現場で勝手にルールが変わっていって本来の目的から逸脱してしまう。そんなことが発生してしまいます。

実際、私の職場でも「数量を確認する」という作業ルールの目的(当初予定と一致するかどうかを確認する)が忘れ去られてしまったため、「数量は確認したが、当初予定との不一致に気づかなかった」ということがありました。

ルールの目的・理由が理解されていれば、機械的な継続による不都合の発生に気づかなかったり、現場で恣意的にルールが変更されて作業ミスにつながるようなことを防ぐことができるはずです。

なぜそのルールを制定するのか?
仮にそのルールが守られなかった場合どんな影響が生じるのか?

これを記載することは非常に重要です。その積み重ねが、組織の知恵になっていくはずです。

シンプルなことこそ、仕事の本質

マニュアルやルールが複雑だと、作ること自体に時間がかかってしまいます。
また、分かりにくいと、次第に誰も見なくなります。

これを回避するための方法は、シンプルにすることです。

大事なことだけを記載する。
あれもこれも、書かない。

一度にいくつものことを耳にしても、人はすべてを一度に理解できません。

象徴的なポイントに絞って短文にすることで、頭の中にすっと入っていくことができます。

報告書はA4サイズ1枚にまとめる
朝の挨拶「おはよう」を徹底する
部下は「さん付け」で呼ぶ

こんな具合で短文にすれば、聞く人の頭の中にしみ込んでいきます。

「無印良品は、仕組みが9割」わたしの活用法

嫌われてでも、とにかく言葉にする

私は学生時代、野球に明け暮れてきました。

野球というのは、曖昧な言葉がたくさん登場するスポーツです。

「身体の ”ひらき” が早い」
「球に ”キレ” がない」
「試合の ”流れ” をつかめ」
「きょうのアイツは球が ”走っている"」
「アイツのピッチングは ”ケレンミがない”」

正直、いまでも、本当のところの意味がわかりません。
指導者はこういった言葉を投げかけても、半分も伝わらないと思った方がよいでしょう。

だからこそ、私は部下に対しては可能な限り言葉での説明を伝えるように心がけています。

ときとして、文章にすると長くなる時もあります。きっと「うるさいなぁ」と思われているでしょう。

でも、言葉にする努力を重ねていくことで、より部下に伝わる言葉を見つけることができると思います。
世代も違う相手と話をするときは、とくに大事にしています。

コツを抱え込む人は、抵抗勢力? 強い味方?

会社で仕事をしていると、自分しかできないことを作ろうとする人たちに出会います。

みなさんの職場にも、一人はいますよね。
「仕事を抱え込む」と表現されるタイプの方です。
私がいた会社では、「築城の名手」と揶揄されたりしていました。(藤堂高虎?)

気持ちはわかります。
かつての私もそうでした。

組織の中で、自分の存在意義をしっかりと感じていたい。
みんなができるようになったら、自分の役割がなくなってしまうように感じる。

そういう「仕事を抱え込むタイプ」の人たちは、マニュアル化・仕組み化が苦手です。
というよりも、避けていると思います。


そんな人たちに対しては、とにかく彼ら・彼女らのこれまでの仕事の蓄積を認めてあげることです。

このタイプの人たちは、「見どころのある」人たちであることが多いです。

他人とは違っている自分に存在意義を見出して、実際、自分で他人と違う状態を作ってきた人たちなわけです。

であれば、そのエネルギーの振り向け先を変えてあげればよい。

これまでは自分が作ってきた自分だけの仕事に籠っていたところを、新しいルールを作ったり、いままでのルールの改善をしたりする方に振り向けてあげるといいです。

この「仕事を抱え込むタイプ」の人たちは、参謀にして一緒に推進してもらうには非常に心強い味方になりやすい人たちです。

このタイプの人たちは、周囲からは「扱いづらいが仕事はできる」という評価であることが多いです。
だから、この人たちが取り組むことに、周囲はついてくることが期待できます。

功績を認めてあげて、同じ方向に向かって進むためのヘルプをもらうように語り掛けていけば、強い推進力を生んでくれるでしょう。

「無印良品は、仕組みが9割」書籍情報

松井忠三「無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい」
角川書店、2013年