【5分で読める要約】「影響力の武器」は最高のビジネス心理学の本【相手に気持ちよく動いてもらう】

2023年1月7日

ロバート・B・チャルディーニ「影響力の武器」誠信書房、2014年

心理学の本というのは数ありますが、ビジネスの場で実践するのにハードルがあるケースが多いですよね。
しかし、この本はすぐに実践できる具体的な方法を教えてくれている数少ない本です。
いわば「ビジネス心理学」の実践書ともいえます。

「あの人は、営業センスがあるよね」
「彼は、”人たらし” だよね」
「あの人に頼まれると、助けてあげたくなるんだよね」


そう評される人は、どんなことをやっているのか。

そんな影響力の武器を活用している人たちの行動エッセンスを、数々の検証データとともに理論化しているのがこの本です。

営業マンなど社外の人との折衝にあたる仕事をしている方
社内で各部署を横断的に調整する仕事をしている方
複数の部下をもってチームを同じ方向に導かなければいけないリーダー

こんな人たちには、必ず仕事の成果を高めるためのヒントが見つかるはずです。
私も、この本から多くを学びました。

使い方を誤ると、悪用もできるような内容だと思います。

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「影響力の武器」が説く6つの大切なこと

返報性の原理-いただいたらお返しをしないと

先にこちらが相手に何かを貢献すれば、相手はそれに対してお返しをせざるを得ない。
この感情は、日本特有のものではないようです。

たとえ価値の低いものでも、たとえ必要としていないものでも。
人は、何かをしてもらったら、相手に何かお返しをしてあげないと気持ちが悪いのです。

これは物や情報をもらう場合に限りません。

相手の頼みごとを断ってしまった場合も。
この場合、相手はあなたに「譲歩する」という貢献をしてしまっています。だから、次に出される小さな頼みごとは断りにくくなってしまいます。

「利益は後で、奉仕が先」
「損して得とれ」

何となく、われわれ日本人には非常に理解しやすい原理です。

「御社のニーズでしたら、正直、XX社のサービスの方がマッチしそうに思うんですよ。」

営業マンのこんな言葉も、自分の利益を捨てて相手の利益にマッチする行動をとるという、形を変えた返報性の原理のケースです。

一貫性-自分の言ったことは否定できない

人は、自分が口にした言葉を後から否定することにハードルを感じます。

むかし、ある外資系保険会社の営業マンの育成研修を受けましたが、しっかりとマニュアルにも明記されていました。

グラフに表された2つの保険商品。
Aの商品は得になり、もう一方のBの商品は損になることは明白です。
でも、営業マンは「○○さんだったら、どちらを選びますか?」と問うことがマニュアルです。

もちろん、答えは決まって「そりゃぁAの方がいいですよねぇ」です。

これがジャブになり、小さな「yes」を自ら重ねていって、自分が口にしたことを否定しにくい状態に陥っていきます。

人は、自分の発言に対する論理的整合を気にする、ということなのでしょう。

営業活動においても、当たり前の質問を敢えて用意して、「○○さんだったら、どうですか?」と問うことはこちらの主張を受け入れてもらうのに前向きな力を生むことでしょう。

社会的証明-みんなで渡れば怖くない

人は、他人が良いと言っているものを「良い」と思う傾向がある。

行列のできているお店だから、行ってみたくなる。
みんなが行っている方向へ、流れて進んでいきたくなる。

何らかの判断をするとき、他人がどう考えているかという点は、あなたの意思にも大きな影響を与えているのではないでしょうか。

少し見方を変えると、みんなが同じ行動をとっていると、それが正しいかどうかという思考をする前に無意識のうちに同じ行動をとろうとしてしまう、ということ。

レビューの星が多い商品は、無意識のうちに良い商品だと認識してしまいますよね。

「みんなが渡っている」状態を証拠として提示すれば、相手の肯定的な行動を生み出すことだってできてしまうということです。

こういった人間の心理的特性を、著者のロバート・チャルディーニは「社会的証明」と呼んでいます。

好意-好意を受ければ好意をもつ

人は、好意を寄せてくれている人に対して好意をもちやすい。

好意の方法は、直接的に「好き」と言われることだけにとどまりません。
理解を示してくれたり、評価してくれたり。

自分に対して肯定的な意思を示してくれている人のことを、あなたは肯定的に評価すると思います。

相手が何かの意見を述べた際、いきなり反論するよりも次のように話した方が相手からの納得を引き出すことができるはずです。
「そうですね。たしかにそのとおりです。ただ…」

これも先に好意を示すことのメリットの例です。

これとまったく同じような例は、デール・カーネギーの「人を動かす」にも登場します。

工場の現場でヘルメットをかぶりたがらない従業員に対して、ヘルメットをかぶらせるにはどうするか?

「ヘルメットというのは蒸し暑くてたまらないよね。こんな暑い時期はとくに。」
「でも、このヘルメットがみんなを怪我から救ってくれるんだから、我慢してでもかぶらないといけないってわけだ。」

同じことは「イエス。バット…」「まずは傾聴して理解を示す」など、色々な表現で言われます。
いずれも同じことを表現しているといえるでしょう。

逆に好意を示しながら近づいてくる人には、少し警戒した方がいいですよね。

権威-形から入ることの効果

人は、権威を象徴するモノや恰好を目にすると、権威を感じるようになりやすい。

医者と白衣、弁護士とバッジ。

権威のある存在を象徴するモノを見たら、そこから想像力で権威を感じてしまう。
しかも、無意識のうちに。

よく仕立てられたスーツを着て、磨かれた靴をはき、派手ではないが高級感のある時計を身につける。

そんな営業マンが目の前に現れると、その人が立派なビジネスマンだという認識を知らないうちにしてしまっていることはないでしょうか。

これは身につけるモノだけでなく、交友関係の示唆でもそうでしょう。

「実は先日、(あの有名な)○○商事の役員とお会いする機会がありましてね。」

こんな言葉を聞いただけで、あなたは目の前の人が立派なビジネスマンだと認識するでしょう。

逆にいえば、自分自身が権威を象徴するものを身につけたり、権威ある存在との交友関係を示せば、相手に対して権威を感じてもらうことができるということです。

個人的には、あまり振り切りすぎると単に「嫌味な奴」になってしまうので、ほどほどにした方が良いと思いますが。

希少性-少ないことは良いことだ

古今東西、手に入りにくいもの、数が少ないものは価値が高い。

「残りわずかです」
「申し込めるのはあと2日間です」

こんな言葉を聞くと、人は急いで行動を起こそうとしてしまいます。

希少性が高い状態になると、そのこと自体に対して価値を感じるようになるわけです。

先日足を運んだ弁当屋。
日替わり弁当があと2つ。

私は、瞬時に弁当を手にとっていました。

しかし次の瞬間、弁当屋は奥から日替わり弁当を3つ取り出してきました。

この弁当屋は、希少性の原理がよくわかっているようです。

「影響力の武器」わたしの活用法

わたしは営業マンです。
この「影響力の武器」を読んでから、意識して行動に取り入れるようになりました。

以下は、実際に私が行っている行動の例です。

(返報性の原理)
相手のニーズを確認したら、それを満たす方法に焦点を当てて話をする。
頼みごとをするときは、先に手土産をお渡しする。

(一貫性の原理)
2つの提案を併記して「もし選択するなら、どちらの方を選びますか?」とお聞きする。

(社会的証明の原理)
他社での採用していただいた際の事例をたくさんお伝えする。
ユーザー会を開催して、互いに交流してもらう。

(好意の原理)
「個人的に」旅行に行った際にお土産を買ってきてお渡しする。
検討状況を確認するときは「お困りになっていないか心配になってしまって」。

(権威の原理)
過去の課題解決の実績を「事例」としてさらっとお伝えする。

(希少性の原理)
繁忙時期に先だって連絡し「もしご決断いただけるならば最優先で対応をしたいと思いまして」。

「影響力の武器」書籍情報

ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 (翻訳)
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
誠信書房、2014年