実は簡単! 営業の際に相手を惹きつける方法(心理学的にもとづいたコミュニケーション)
この投稿では、主にBtoBの新規営業活動で見込み客・顧客と対話をする際、相手にこちらの話に興味を持っていただく、理解だけでなく納得していただくための方法を記載しています。
相手側分からない段階での見込み客の集客方法については、この投稿には含まれていません。
目次
若い営業担当者に読んでほしい ~営業経験の長さは関係がない~
「営業は場数だ」「とにかく量をこなせ」
営業を仕事にされている方にとっては、一度は耳にした言葉ではないでしょうか。
私は新卒で社会に出てから15年ほどは、一般的には業務・企画と言って良いセクションにいました。当時、お客様の元へ訪問することはありましたが、既存顧客のところへ行って事務的な調整をすることがメインでしたので、正直、若い頃の営業経験などほとんどありません。
その後、30代半ばになって、自分たちで考案したサービスを売ることになり、ようやく新規営業中心の仕事になりました。
その新規営業で一番苦労したのが、お会いする相手の興味・関心をどうやって惹きつけるかです。
サービスの紹介をしても、相手に興味がないのが表情で分かります。
もともと、営業の訓練もしてきておりませんでしたので、何をどう伝えれば良いのか、非常に悩みました。
それから10年、自分なりに営業論・マーケティング理論などの学習と実践で試行錯誤を繰り返してきながら、何となく営業活動のスタイルを構築できてきたと思っています。
結論から申し上げます。
営業活動のコツは、心理学にもとづくアプローチです。
「営業は場数だ」「とにかく量をこなせ」を実践してきた私にとっては、一定の量を実践して質を上げてきたのですが、とはいえ、「あの頃、こういうの知っていたらもっと早く成果が出せたのに…」という思いが拭えません。
「今にして思えば、当時知っていたら良かったなぁ」というような知識・スキルを以下に記載していこうと思います。コロナ禍でWEB面談が加速している現在でも流用できるものばかりですし、むしろ限られた回線接続時間でその重要性が高まっているのではないかと思います。
断片的で脈絡がないかもしれませんが、ご容赦ください。
なお、以下に記載する内容は、相手を騙すためには絶対に使わないでください。
あくまで、時間をかけてコミュニケーションを取らないと理解していただけないことを、短い限られた時間のなかで効率的に行うための参考となる情報ですので。
自身の情報の開示-親近感(受け入れてもらう)
相手との面談を始めるにあたって、いきなり本題に入るのはお薦めできません。
まずは、商品・サービスの説明に入る前に、あなた個人と相手の方個人の距離を縮めることが必要です。
自分の話を相手に聞いてもらうためには、まずは相手に聞く耳をもってもらう必要があります。
そして、そのために必要なことは2つ。
1つめは、「親近感」を感じてもらって受け入れてもらうこと。
人は、相手のパーソナルな面を知るほど、その人の話を聞く姿勢ができます。
だから、互いに仕事とは関係のないプライベートな面を知ることが大事です。
そのためにどうするか。
それは、あなたから積極的にあなた自身のことを開示することです。
それも単なる自己紹介ではなく、時節柄の話題やエピソードの一部として。
あなた「最近、在宅勤務が増えていますよね。御社はどうですか?」
相 手「そうですね。ウチもかなり在宅勤務になっていて、会社に出ることが減りましたよ。」
あなた「ですよね。私は単身赴任で東京に来ているんですけど、もう自宅からでも仕事ができてしまいますよ。」
相 手「そうでしょうね。」
あなた「でも、うちの家族は『コロナが怖いから、東京から帰ってくるな』って言うんですよ。先月なんか、せっかく地元に帰ったのに私は1週間ビジネスホテル住まいですよ。娘が受験生なんで『絶対にうつすなって』。今も借上げ社宅でひとりテレワーク続けてますけど、寂しいもんですよ。」
正面切って自己紹介している訳ではないですが、この会話であなたに関する情報をかなり相手に与えることができたと思います。
自身の情報の開示-権威性(教える立場に立つ)
自身のプライベートな情報を伝えることで距離感が縮まりました。
次にやるべきことも、引き続きあなた自身の情報の開示です。
しかし、今度の目的が違います。
それは、あなたに能力があって情報を教えてもらうに足る存在であると認識してもらうことです。
いわば、あなたにとって権威を感じ取ってもらうことで。
「自分が知らないことを知っている」「自分にはない経験をもっている」と感じてもらえれば、本題に入る頃には、相手はあなたから教えを請う心理状況になります。
このためにあなたが話すべきことは、たった1つです。
自分が同種の課題を解決してきた実績 これだけです。
ただし、話の仕方としては、「私には・・・という実績があります」ではありません。
効果的なのは、こんな話し方です。
あなた「いまお聞きしたような話は、実は御社以外からもよく聞くお話なんですよ。」
相 手「へぇ、そうなんですかぁ。」
あなた「先月ご相談いただいた会社さんは、機械部品を扱う商社さんだったんですけど、まったく同じようなお悩みでしたよ。商社さんていうのは、仕入れと販売があるので、同じような悩みになるんですかね?」
相 手「えっ、そうなんですか。その商社さんは、どれくらいの規模の会社だったんですか?」
あなた「人数的には御社と変わらないくらいですよ。ちょっとご要望が特殊だったんで苦労したんですけれど。」
他社の事例は、どこの会社でも聞きたい情報です。
あなたは事例を語ることによって、相手が聞きたい情報を伝えることを通じて、自身の実力をそれとなく伝えることができるのです。
事例のよいところは、自慢にならないことです。苦労した話として伝えてあげれば、相手は「自分も同じようなことが課題になってくるな」「この人だったらそれを解決してくれそうだな」という関係ができあがってくるのです。
買ってもらわなくてもいいんです(警戒心を解く)
そして、あなたは本論に入ります。
ただ、あなたが話の本題に入る前に、相手に対して明示した方がよいことがあります。
それは、「必ずしも買ってくれなくてもいいんです」ということです。
営業訪問先の相手は、常にあたなを警戒しています。
売り込まれてしまって、高い買い物をさせられてしまわないか。
「本日は情報のご提供でお時間をいただいていますので、それをどうご判断されるかはじっくりお考えください。買っていただけなくても全然かまいませんので」と明示しておくことで、相手の警戒心を解くことができます。
もちろん、そうはいっても相手はあなたが売り込みにきたことを心のどこかで知っています。
それでも、心理的に和らげる効果があるのです。
商品・サービスができた経緯を語る
どんな商品・サービスにも、それができた狙い・経緯、また開発後の苦労があると思います。
思った通りにいかなかったこと、逆にお客様の声から思いがけない用途が見つかったこと等々。
これを語ってあげることが極めて大事です。
これと似たこととして、商品・サービスの機能・スペックを伝えることがあります。
しかし、先にこれを始めてはダメです。
人間は感情の生きものです。
有名な話ですが、アメリカの化学メーカー3Mが開発したポストイット(付箋)の開発経緯などが参考になると思います。
当時、3Mでは何とか強力な接着剤を開発しようとしていところ、研究過程でたまたま「くっつきやすいが剥がれやすい」接着剤ができてしまった。そこで、「これって、使えるんじゃない?」ということで、ポストイットの開発につながっていったそうです。(もの凄く要約しましたが、詳しくは3Mのサイトをご参照ください)
これからあなたが紹介する商品・サービスを説明する前に、苦労して問題を解決してきた話、偶然できた経緯などを語ることによって、聞いている相手方は感情を刺激され、興味が湧き、聞く準備ができます。
経験的には、この語りかけ(ストーリーテリング)は、一人称で語れる方が強いです。
あなた自身が苦労してたどり着いた、というストーリーであると、より目の前の相手の感情を刺激します。
上記の3Mのような例だと、「うちの会社の昔の人が」という全くリアリティのない世界になりますが、「私も仲間と一緒にこの数年苦労して、ようやくこの商品ができたんですよ」という方がベターです。
嘘はダメですが、できるだけそういったストーリーを選ぶ方がよいでしょう。
昔、学生時代の教授が日本政治史の授業中に「大久保利通が内務省のフロアに現れると、サーッと場の空気が変わるんですよ」などと情景を説明していたのに惹きつけられました。よく考えると年齢的に「あなた見てきたわけではないよね」というツッコミどころ満載なのですが、それだけ一人称で語る方が効果が高いのだと思います。
頼れる専門家(相対的な自分のポジショニング)
商品やサービスの機能・スペックについての説明を終えたら、再び相手の感情を刺激するタイミングです。
そのためには、目の前の相手と同じ境遇にある同じような会社の事例を持ち出して、そこの課題をあなたが解決したエピソードを紹介するのが効果的です。
これは、もちろん潜在化しているニーズに気づかせるという目的もありますが、ここでお話ししている営業活動のコツとしては、あなたに対する信頼を生むことが目的です。
相手から「この人は色々知っているし、経験もある頼れる人だな」「何か困ればこの人に相談すれば解決してくれそうだな」と思ってもらうことが目的です。
自身が売り込みを受ける場合を想定してもらえれば分かりやすいと思いますが、アプローチしてきた人間が「営業マン」なのか「相談するのに値する人間」なのかを仕分けて判断しているはずです。
あなたがアプローチする際には、「相談するのに値する人間」に分類してもらわなければなりません。
そのためには、あなたにその能力があることを示して理解してもらう必要があるわけです。
ところが、ここで勘違いをする方が現れます。
相手そっちのけで、蕩々と自慢話を始めてしまう人です。
そうなると、能力は持っていると認識されたとしても、「相談するのに値する」人だとみなされません。
この勘違いに陥らないようにするためには、常に相手の興味の視点から話をすることです。
「私はこういう案件を対応してきました」ではなく、
「以前に対応したお客様だと…という困りごとがあったのですが、御社の場合はそういう点はありませんか?」「今回課題だと言われた…については、どこも困られているんですよね。以前に対応した…でもそうでした」といった形で話すことによって、間接的に能力を持っていることを伝えるとともに、押しつけがましくない伝え方ができるのです。
雑談のなかで、サラッと紹介するのも良い手だと思います。
自分が紹介する商品・サービスのマイナス面の開示
あなたが相手からの信頼を得る方法を続けます。
もの凄く大事であるにもかかわらず、多くの営業マンがあまりやらないことがあります。
それは、あなたが紹介する商品・サービスのマイナス面をしっかりと開示する、ということです。
たとえば、能力の高いエアコンを紹介しているとします。
あなた:「お部屋は何畳ですか?」
相 手:「8畳です」
あなた:「12畳を超えないのであればこの商品は向いていません。もっと小型で安いタイプを導入する方がお得ですよ。こんな話、私が言うと会社から怒られてしまうんですが、A社のエアコンは安いし性能が良いので評判いいですよ。能力を落として検討されるならば、A社の製品がお薦めです。ただ、室内で調理など熱の出るお仕事を頻繁にされるようであれば、ウチのも選択肢かなと思います。」
マイナス面も含めて誠実に情報を開示した場合、相手には「この人は正直なひとだな」という印象が生まれます。そして、「売り込まれている」のではなく「知識を教えてくれた」という印象になるのです。
一歩ずつハードルの低いアクションを積み重ねていく
相手からの信頼を勝ち得たあなた。
最終目的は、忘れてはいけませんが「売る」ことです。
でも、ここでそれを出してしまうと、築いてきた信頼が崩壊します。
いや、むしろ失望に変わるのでマイナスになるでしょう。
このバランスのなかであなたがやるべきことは、ハードルの低いアクションを用意して、相手に一歩だけ踏み出させることです。
たとえば、無償のトライアル利用を申し込んでいただくとか、無償見学会への参加を促すとか。
あなたに対して信頼を感じている相手としては、費用もかからないのでyesと言いやすいアクションです。
こうして、少しずつゴール(成約)に向かって動き出すことになるわけです。
やり過ぎは禁物
上記に記載したような手法は、一部のメールマガジンやウェブサイトではもっと激しい形で展開されています。
頻度の高すぎるメルマガ、申込み期限が迫っていることを過剰に演出する手法、胡散臭い導入事例など。
これらのやり過ぎはマイナスだと思います。
結局は相手との信頼関係が取引のベースになりますので、どんなときも相手から誠実な会社・人であると見られるような範囲に努めるべきです。
とくにBtoB営業では一回きりの取引では終わらず、継続的な取引となることが圧倒的に多いですから。
みなさん、誠実に節度をもって営業活動に取り組んでいきましょう。