音楽出版社における働き方改革を確実に実践する方法(改善のカギは契約書管理にあり)

2021年8月9日

(写真:ぱくたそ)

音楽出版者の働き方改革のカギは契約書管理にあった-ある音楽出版会社での日常風景

音楽出版社に勤めるあなた。
あなたは、営業担当者から「このアルバムをインドネシアの地上波放送で使えるか確認しておいて」と指示を受けました。

まずは、アルバム内の10曲すべての著作権者、合計20名のお名前と楽曲名をリストアップして、メモを取りました。
そして、そのメモを片手に、契約書が管理されている書庫へひとりで向かいます。


書庫のカギを開けたあなた。内部の空気はよどんでいます。
山積みになった多くの書類。その大半を占めるのが”契約書”です。

著作権者の先生ごとに五十音順で並べられた契約書のファイル。

手にしたメモの先頭にある名前は「山田太郎」先生です。
その「山田太郎」先生との契約内容を確認するため、五十音順で並べられたファイルから「や」のあたりに向かい、

ようやく「山田太郎」先生のとの契約が綴られたファイルを発見しました。

しかし、問題はここからです。

そう、山田太郎先生は多くの楽曲を手掛けてきた大御所。
まわりのファイルよりもひと際分厚いファイルを開くと、過去に締結された契約書が溢れんばかりに時系列に入っています。
この中から、今回のアルバムに収録されている楽曲「甲子園の歌」が記載されている契約書を探し出さなければなりません。


「たしか、この曲は15年ほど前にできた曲
あなたは契約書の束をめくりながら、15年ほど前の契約書が綴られているあたりに狙いを定めて、契約書を一つずつ確認して調べていきます。


数分後、ようやく目当てのものが見つかりました。
そして、契約書を開いて記載されている文言を読んでいきます。
「だめだ。日本国内のことしか記載されていない。」


そこで、あなたはその契約書が締結されて以降、覚書で利用範囲が追加されていないか確認していきます。
「あった!」
最初の契約締結から4年後、覚書を締結してインドネシアの地上波での放送にも範囲を広げることになっていました。

どうやら新たに覚書を締結しなくても、今回のプロモーションに利用することができそうです。


「ようやく1つ終わった。けれども、あと19回これを繰り返すわけか・・」
「毎日こうなんだから、テレワークを進めるなんてできないよね・・」

コロナ禍で緊急事態宣言が出されるなどの変化を受けて、直近で働き方も大きく変わりました。
多くの企業が働き方改革に取り組むなかで、その取り組みの推進に苦労している会社も多くあります。
このブログでは、そんな苦労している会社の代表として、音楽出版社にスポットライトを当てて、その課題解決のための方法を解き明かしていきます。

あなたの会社で働き方改革が進まない原因

突然ですが、「20分」 これは何の数字だと思いますか?

実はこれ、企業の担当者が1日のうちに”書類を探すこと”に費やしている時間です。
(コクヨの調査)

しかし、あなたの会社が音楽出版社だとしたら、この数字を上回っているのではないでしょうか?
少なくとも、私が出会ってきた音楽出版会社の方々は、確実にこの数字を上回っています。

では、どうして音楽出版社では書類を探す時間が多いのでしょうか?

「オフィスのスペースが狭いから」
「過去の担当者のファイリングの仕方が悪いんだよね」

一般的にあるこれらの声は、たしかに事実であることが多いです。

しかし、音楽出版社で書類を探す時間が多いのはこれだけではありません。

そこには、音楽出版社に特有の構造があるのです
これを正しく理解しないと、働き方改革は実現することはできません。
経営者側は「いつになったら働き方を変えることができるようになるんだ?」と疑問をぶつけ、担当者側は「ウチの経営者は実態が見えていないでお題目だけ言っている」とすれ違いが続いてしまいかねません。

この音楽出版社に特有の構造を把握して、それを踏まえた対策をされているでしょうか。

音楽出版社の働き方改革を阻むものとは?

では、音楽出版社における働き方改革を阻む特有の構造とは何でしょうか?

それは簡単にいうと、次の5つです。

少し詳しくみていきます。
(音楽出版社の方にとっては当たり前のことなので、読み飛ばしていただいても構いません)

①取引媒介者の立場にあるから契約書が多くなる

言うまでもありませんが、音楽出版社は、作曲家・作詞家などの先生から楽曲をお預かりして、その楽曲をCDなどでの販売、放送やゲーム・イベントでの利用など様々な用途に利用することを媒介する事業を行っています。利用者から得た収益の一部を手数料として差し引き、残りを権利者に分配しています。

このような立場にいるため、音楽出版社では、
・作曲家や作詞家などの著作権者から著作権の譲渡を受けてプロモートを受託するとの契約(著作権契約)と
・その楽曲を利用させることで対価を得る契約(利用許諾契約)
が発生します。
分かりやすく言うと仕入れ側と販売側の両面で契約が発生します。しかも、扱っているものが権利なので、一回販売しても売り切れるわけではありません。

そのため、そもそも数多くの契約書が発生する立場にいるわけです。

②契約書の数量に対して管理する人数が少ない

あなたの会社の契約管理担当者の人数を、他業界の会社と比較してみたことはありますか?
おそらく比較したことのある方は、ほとんどいないのではないかと思います。

このデータを比較してみると面白いことに気付きます。
なんと、音楽出版社の担当1人あたりの管理契約書件数の多さは、金融機関に次ぐ多さなのです。
(詳しいリサーチデータをご希望の方は別途ご連絡ください。)

逆に言うと、音楽出版社では非常に限られた人数で、多くの契約書を管理しているわけです。

普段、ご自身の会社で、契約関係の業務の負担が大きいと感じているようであれば、それはあなたの管理能力が低いからでも、あなたの部下のモチベーションが低いからでもありません。

業界全体が、少数精鋭で管理業務を行うような人員構成になっているからなのです。

ここまでは、音楽出版社が置かれている状況で、働き方改革を阻む基礎環境ともいえる状態です。

③これって利用許諾してよい範囲に含まれているんだっけ?

ここからが、具体的に音楽出版社で働き方改革が進まない直接的な要因です。

音楽出版社が締結する契約においては、個々の相手先・対象の楽曲ごとに様々な条件が付されることがあります。

著作権譲渡契約においては、その楽曲を利用する範囲が細かく限定されます。

例えば、国内地上波放送することだけ合意しているようなケースがあります。この場合には、海外での利用や国内でも地上波以外放送以外での利用案件が出てくると、別途、個別に著作権者との合意を締結する必要性が生じます。
とくに、契約当時には想定していなかったような用途が世の中に出てくると、新たな合意締結が必須です。昭和の時代には、ゲームで楽曲を利用することなど想定していなかったような契約が多くあったことでしょう。
また、著作権者によっては、自身の楽曲のイメージを保持するために、たとえば「パチンコ機の音楽には絶対に使わないでほしい」「お酒やタバコ関係での利用はやめてほしい」といった要望が入ることもあります。

これらの個別の合意が重なることによって何が起きるかというと、次に楽曲利用の案件があったときに、
「これって、この先生との著作権契約のなかでカバーされている範囲なんだっけ?」
という確認が発生することになるのです。

しかも、歴史ある楽曲の場合には、もともとの契約書だけでなく、その後に積み重なったすべての覚書の確認をしていかなければならない、ということになるわけです。

もし、それら過去の契約書がすべて紙で存在しているとするならば、当然オフィスでファイルを一つずつ確認することになるわけです。

こういった細かな条件の存在と、それを確認しなければいけない業務が事後に発生することが、契約書を探し出して確認する業務をせざるを得ない事情であり、働き方改革を阻む要因のひとつになっているのです。

④著作権契約は楽曲単位、プロモーションは作品単位

「契約書を確認しなければならない」
それだけならば、多くの企業で発生していることですよね。
しかし、音楽出版会社ではその「確認」に時間がかかる構造があるのです。

それは、著作権契約と利用許諾契約とで管理単位が異なる場合があるからです

たとえば、CDアルバムのような作品としてプロモーションされる場合、「作品」「原盤」がその単位となります。
しかし、このプロモーションを可能にするためには、その作品に含まれるすべての楽曲の著作権者との契約において今回の利用がカバーされていることが必要になるのです。

たとえば10曲の楽曲が収録されたアルバムについて、それぞれ異なる作曲者と作詞者が1人ずついる場合、このプロモーションを行うためには、20件の契約書の内容を確認する必要があります。

この契約書を確認する作業がどれだけ大変なものであるのかは、冒頭のストーリーを御覧いただければ十分にお分かりになると思います。

⑤先生からの要望への対応は迅速に

作曲家や作詞家といった著作権者の先生のなかには、ご自身の契約を必ずしも十分に管理されていない場合があります。
そのため、契約内容に関する問い合わせなども多く発生するようです。

担当者としては「その契約書は先生もお持ちですよね…」と言いたいところ、ぐっと飲みこんで、書庫に入って調べ物をするということもあります。

この背景にあるのは、先生の楽曲を継続して扱わせていただきたい、という音楽出版社側の立場です。
営業的に考えると、そこはやむを得ないところでしょうか。

余談ですが、著作権者の先生が亡くなられた際、相続者となる息子さんから「親父が権利を持っている楽曲と権利の範囲をすべて一覧にして出してくれ」といった要望を受けることもあるそうです。
音楽出版会社の中には、著作権者ごとではなく、作品ごとに契約書をファイリングされているケースがありますが、そんな会社にとってはもの凄い作業ボリュームになるはずです。

働き方改革を進めるために実施すべき、たった2つのこと

それでは、音楽出版社において働き方改革を進めるためには、何をしていけばよいのでしょうか?

難しいことではありません。
ここまで読み進めていただいた方はお気づきだと思いますが、契約書の管理を改善することです

音楽出版社に勤務される方は、様々なことに対応できるようなスキルの高い方が多い印象です。
にもかかわらず、その有能なみなさんが書類探しに時間を奪われる状態を改善すればよいのです。

そのために、具体的に何をするべきでしょうか?

電子契約を導入すること?
管理システムを導入すること?

解決策から考えないでください。

やるべきことは、たった2つ。
 a) 現在のあなたの会社の契約書の管理状況を棚卸しする
 b) 管理の改善に成功している事例を知る
これに取り組めば、自ずとやるべきことが見えてきます。

では、どうやって取り組めばよいのか?
その進め方や詳しい内容、実際の取り組み事例などを記載した 無料の 小冊子「音楽出版社における契約書管理のすすめ」をご用意しました。

小冊子を無料で差し上げます

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まずは、これを通じて現状把握とゴールのイメージを定めることができれば、あとは自ずと解決策が見えてきます。
これ自体は決してお金のかかることでも、面倒なことでもありません。
そこから方向性を定めて、少しずつ改善していけばよいと思います。
そのためのお手伝い・アドバイスは無償でさせていただいています。

P.S 音楽出版社の方は、毎日のお仕事で本当に苦労されています。少しでもその苦労から解放して、本来のコア業務に集中していただける環境をつくるお手伝いをすることが、私の願いです。