【実例】契約締結時の経緯をカンタンに検索したい!
「この契約書の文言だけ、どうしてそんな定めになっているんだ?」
「締結当時、どんな判断をしたのだろう?」
「相手方とはどんな交渉をしてきたのだろうか?」
契約の締結から数年が経過して、お互いの担当者も代わったころ、
トラブルが発生して、締結当時にどういった経緯があったのか確認しなければいけなくなった。
そんな経験をお持ちの方も多いではないかと思います。
こんにちは。Winstonです。
金融機関からベンチャー企業まで、契約書を始めとする重要書類の管理のお手伝いをしています。
最近、偶然にも同じような悩みをもつ会社に2社、出会いました。
その悩みとは、契約書の締結から数年が経過した後に、当時の交渉経緯や社内での判断経緯を調べる必要が生じて、その対応にかなりの時間を要してしまった、というものです。
今回は、そういった悩みの背景にある事情、その解決の方法について、解説をしていきたいと思います。
目次
契約締結当時の経緯を調べたい-山下さん(仮名)の悩み-
A社は多数の店舗をもつ大手小売店。
以前に新たに投入した商品プロジェクトが社内で立ち上がり、その商品の受注センターの業務を、データ入力やコールセンターを事業としているB社に委託しました。
当初の契約期間は5年間。
昨年からこのプロジェクト案件の担当になったのが、入社6年目の山下さん。
業務にも慣れてきて、大きなトラブルなく日々を過ごしていました。
ところが、今年に入り上層部から委託先見直しの指示があり、複数のベンダーに声をかけてビッドを実施。これまでより提案内容もコストも優れていたM社に、委託先を切り替えることが決まりました。
そこで、山下さんは従来の委託先B社に連絡をして契約の打ち切りを通告したところ、違約金の請求を受けました。
契約書を見てみると、たしかに違約金の条項が書いてあります。
その内容は、「残りの契約期間の月数×416,666円の金額を支払うこと」とされています。
社内で支払いの上申をするにあたって、この違約金の金額の根拠を確認しようとしましたが、運悪く前任者は転職していて、法務部門に聞いてもわからない状態。
そこで、B社に連絡したのですが、B社の担当者もこの数年で代わっていて、お互いに金額の根拠が分かりません。
そこで、B社の当時の担当者に連絡をしてメールの記録を遡ってもらいました。
実は、このプロジェクトに対応するために、B社側で場所を確保して設備工事を実施し、システム・機材を整え、管理用のソフトウェアも専用で作っていました。
この償却期間を契約期間の5年としていたため、期間内に解約する場合にはその費用を負担してほしい、
という趣旨で違約金が定められていたのでした。
結局、山下さんはこの調査業務に数日を費やしてしまったそうです。
契約当時の経緯を知りたいのは、法務部門よりも事業部門や経営層
このような契約締結当時の経緯・判断根拠を知りたいという悩みは、実は、法務部門の担当者からはあまり聞こえてきません。
多くの会社では、法務部門の担当者は締結時のリーガルチェックでは関与をしますが、事後のトラブル対応の際には、法的な問題が生じない限りはあまり関与しないからです。
事業部門の担当者が過去の経緯を検索する手間で悩んでいるのに、法務担当者が気づいていないケースが多いのです。
ある会社で営業を統括されている副社長とお話をした際も、こんな課題を口にされていました。
「過去から続いている案件では、どうしてこんな条件になっているのか分からないものがあって困る」
営業・経営からすると課題感に感じている。
けれども、法務部門が主導する契約書管理の仕組みでは、締結時の経緯・交渉経過との一元管理が考えられていないため、事業部門と法務部門の間ですれ違いが生じているわけです。
契約当時の経緯検索のための2つのステップ
では、この「すれ違い」を解決するためには、どうすればよいでしょうか。
結論からいうと、「締結後の契約管理情報」から「締結時の情報」を辿って検索ができるようにリンクさせることです。
そのためには、2つのステップが必要です。
1)契約締結時の情報を構造化・データベース化させること
契約締結時の情報が担当者間のメールのやりとりの中に埋もれてしまうと、「締結後の契約管理情報」とリンクさせることは困難です。
そこで、前提として契約締結時の情報は、何らかのデータベースに一元化しておくことが必要です。
具体的には、①社内でのリーガルチェックの記録はワークフローシステム内に記録を残しておく、というのが近道です。
ワークフローシステムを利用していない場合には、リーガルチェック記録を帳票化して記録データに残しておくことでも構いません。
また、②相手先との間での交渉については、「交渉経過表」を作成して①と一緒に保存しておくとよいでしょう。
この「交渉経過表」では、いつ、誰が、何を言っていたのかを記録し、可能であれば相手方と双方で確認し合うとベストです。
①②ともに、案件ごとに一意の管理番号を付与するようにしてください。
2)締結後の契約管理情報からのリンクの仕組みを作ること
次に必要なことは、締結後の契約管理の仕組みからリンクできる仕組みを作ることです。
先ほどの「契約締結時の情報の構造化・データベース化」に比べると、こちらができていない会社の方が圧倒的に多いのではないかと感じています。
でも、やるべきことは決して複雑なことではありません。
契約管理のデータベース上に、締結時のワークフローシステム・交渉経過表に付与した案件ごとの一意の番号を入れておくだけです。
例えば、締結時のワークフローの管理番号が「2022-01」だったならば、締結後の契約管理のデータベースにも「締結時WF番号」の列をつくって「2022-01」と入力しておけばよいだけです。
契約管理の仕組みは、エクセルでも外部クラウドサービスでも問題ありません。
そうすれば、事後に何かトラブルがあってもその番号を頼りに検索することが可能になります。
この本当に些細な「番号を入れておく」という操作ひとつで、事後のトラブルの早期解決に役立つのですが、ここに気づいていないケースが多いのは残念なことです。
是非、やってみていただきたいと思います。
さらに効率化を目指すなら-最初から連携しているサービス
このようにシンプルな解決策で解決できる課題ではありますが、それでも、大手企業などで毎日のように複数の契約締結が発生しているケースでは、「締結時ワークフローの検索・管理番号のコピー」→「締結後管理データベースの検索・ペースト」という操作は面倒に感じることでしょう。
そこで、「締結時のワークフロー」と「締結後の契約管理」がはじめから一体化している、または、連携しているサービスを利用するというのも選択肢になるかと思います。
以下のようなサービスが検討の対象になるでしょう。それぞれのサービスページのリンクを貼っておきますので、参考にしていただければと思います。
ContractsCLM(ContractS株式会社)
Contract Workflow Service(リコー)
LAWGUE(FRAIM株式会社)
ContractsCLMとContract Workflow Serviceは、契約審査から締結・管理に至るまでの一連の過程全般をカバーするプラットフォームといえるサービスです。
これら2つのサービスは、契約管理全般をカバーする仕組みなので、すでに契約管理の仕組みのベースがあるケースでは、全体の業務を見直すことが必要になるでしょう。
一方でLAWGUEは、契約作成時のツールという側面が強いですが、外部の契約管理システム(鈴与の契約書管理システム)とデータ連携しているので、合わせればデータベースの一元化ツールとして役立つでしょう。
それぞれのサービスについての詳細や、選択する際の注意事項などは、別の記事でも詳しく解説をしていますので、そちらもご覧ください。
>>【売る側の人が教える】おすすめの契約書管理クラウドシステム8つ
なお、LegalForceが頭に浮かんだ方も多いのではないかと思いますが、確認したところ、締結時のリーガルチェックを支援する「LegalForce」と、締結後の管理をする「LegalForceキャビネ」とは、データの連係がなされていないそうなので、ここでの紹介からは除きました。
まとめ
契約の締結後、しばらくが経過してから当時の経緯を調べなければいけないケースがあるが、この対応ができていないケースが多い。
その原因は、「契約締結時の情報を残すデータベース」と「締結した契約書を管理するデータベース」が分断されているから。
この課題は事業部門で発生しているのに、法務部門では気づいていないことが多い。
この課題を解決するためには、2つのデータベースに共通する管理番号つけてリンクさせること。具体的には、「契約締結時の情報を残すデータベース」の固有番号を「締結した契約書を管理するデータベース」に入力することで、後から辿れる状態を作ること。
入力作業が面倒なようであれば、一元化されているクラウドシステムを使うことも選択肢となる。
もし、自社で具体的に進める際に支援が必要なようでしたら、お問い合わせをください。ある程度は無償でアドバイス・ご支援が可能です。
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