【契約管理担当者、必見】 電子契約と紙契約書のデータベース分断とその解決方法

2022年9月19日

 ~最近、契約書が見つかりにくくなっている本当の原因 ~

ここ数年、企業の契約書管理の担当者から、ある悩みが急に聞こえてくるようになりました。

「最近、契約書を探すことが多くなった」
「以前よりも、過去の契約書を見返す際、明らかに見つかりにくくなった」

今回は、こんな悩みの原因と、その解決方法をお伝えします。

契約書が見つからない理由
それは契約管理データベースが分散されたから

「最近、契約書を探すことが多くなった」
「以前よりも、契約書が見つかりにくくなった」

そう聞くと、「そんなバカな」と思いますよね。
でも、こういう声が増えているのは事実なんです。

その原因はなんだと思いますか?

ズバリ言うと、それは、コロナ禍以降、電子契約が急速に普及してきたことによって、「契約書を管理するデータベース」がバラバラに分散されてしまったからです。

例えば、あなたが8千円のお金をもっているとします。
以前は、5千円札1枚と千円札3枚が一つの財布に入っていました。
しかし、電子マネーが普及したことによって、財布には千円札が1枚だけ。残りの7千円のうち4千円はPayPayに、2千円はSuicaに、6百円はメルペイに、4百円はnanacoにある。

こんな感じでバラバラに分散されてしまっていれば、「いったい今、どこにいくらあるんだろう?」となってしまいます。

これと同じことが、いま企業の契約書管理の現場で発生しているのです。

つまり、以前は、過去の契約書はすべて紙だったので、キャビネットの中に締結先別にファイリングされていた。だから、そこだけを探せばすぐに見つかった。

ここに電子契約が普及したけれども、紙で締結する契約書は依然として残っている。
しかも、電子契約とひと口に言っても、クラウドサインで締結したものもあれば、相手方の希望でドキュサインで締結したものもある。
さらに悪いことに、同じクラウドサインでも自社側から振り出したものもあれば、相手方が振り出したものもある。

先ほどのお金の例では、財布かスマホに集約されているからまだよいのですが、契約書の場合、それ以上にホントにバラバラになってしまってきているのです。

いままではバインダーやキャビネットという一つのデータベースにまとめられていたものが、どんどん分かれていってしまっている。

契約書が見つかりにくくなった本当の原因

つまり、「契約書の締結を楽にする」というメリットと引き換えに、”契約管理データベースの分散”が進んでいるわけです。

これが、「最近、契約書を探すことが多くなった」「以前よりも、契約書をが見つかりにくくなった」という悩みの正体です。

契約管理データベースを統合すれば、課題は解決できる

ここまでの記載のとおり、契約管理担当者に生じている大きな悩みの根本原因は、電子契約が普及したことで契約管理データベースの分散・分断が生じていることにあります。

だからといって、電子契約の便利さは手放せませんよね。

であれば、解決方法はひとつしかありません。

課題の根本解決の方法

それは、分散されてしまった契約管理のデータベースを統合することです。

意外とシンプル、契約管理データベース統合の方法とは

「契約管理のデータベースを統合する」といっても、「それって、どうやって?」

という疑問を持たれることでしょう。

でも、分解しながら考えていけば難しくはありません。
データベースを統合するには、次の4つのケースを解決すればよいだけです。

①自社も相手方も同じ電子契約サービスを有償利用していて、相手方が振り出した場合
②自社と相手方が異なる電子契約サービスを利用していて、相手方の形式で締結せざるを得ない場合
③自社が2種類の電子契約サービスを利用している場合
④電子契約以外に紙で締結する契約書がある場合

自社も相手方も同じ電子契約サービスを有償利用していて、相手方が振り出した場合

自社も相手方も同じ電子契約プラットフォームを有償利用している場合、相手方が振り出してきたときには、自社の管理データベースに入ってこないケースがある、というものです。

多くの電子契約では、メールアドレスによってユーザー識別がなされます。

そのため、相手方振り出しで、かつ、自社のユーザー登録がないメールアドレスで承認をしてしまうと、自社の管理データベースには統合されず、承認者がローカル環境にダウンロードできるだけになってしまいます。
承認者がダウンロードして、システム上に手動でアップロードしてくれないと紛失と同じ状態になるわけです。

この問題の解決策は2つです。

解決策1:自社の社員・メールアドレスは、すべて電子契約のユーザーとして登録すること。
解決策2:必ず特定の社員かグループアドレスを承認プロセスに入れる運用とすること。

いずれかの対応をすれば、自社が振り出すか、相手方が振り出すかにかかわらず、自社の環境に一元化されますので、この問題は解決できます。

比較的小さな会社であれば「解決策1」、大きな会社であれば「解決策2」がおススメです。

自社と相手方が異なる電子契約サービスを利用していて、相手方の形式で締結せざるを得ない場合

例えば自社はクラウドサインを使っていて、相手方はドキュサインを使っているというケースで、相手方の要望でドキュサインで締結せざるを得ない、という場合を想定してみます。

そのままでは、この契約は締結者がローカル環境にダウンロードできる状態になるだけで、①と同じように、承認者がダウンロードして、システム上に手動でアップロードしてくれないと紛失と同じ状態になるわけです。

この場合にできることは、上記①の解決策2と同じです。

解決策:必ず特定の社員かグループアドレスを承認プロセスに入れる運用とすること。

この「特定の社員」を契約管理担当者にしておけば、そこで捕捉して、担当者がダウンロードして確実にメインの契約データベースに保存する運用をする、ということができます。

自社が2種類の電子契約サービスを利用している場合

たとえば、基本的にはクラウドサインを利用していても、外資系企業との契約の場合にはドキュサインを利用している、という会社も多いのではないかと思います。

この場合、締結された電子契約は、そのままでは2つのデータベースに分かれて蓄積されていくことになります。

そこで必要になるのが、「下流で統合する」という考え方です。

解決策:2つの電子契約データベースの下流にさらに契約管理データベースを作って、そこにデータを統合していく。

「契約管理データベースを作る」とか「契約管理データベースを統合する」というと、かなりハードルが高く聞こえるかもしれませんが、エクスポートして一つのエクセルの表にまとめる、ということでもよいのです。

注意すべき点は、保有しているデータの項目や型を合わせることです。
先ほどの例でいえば、次のような状況だとまずいわけです。
・クラウドサインでは「契約終了日」のデータ項目があるのに、ドキュサインではその項目がない
・クラウドサインでは契約締結日が「2022年10月1日」という形式なのに、ドキュサインで「2022/10/01」という形式で異なっている

このあたりは、電子契約サービスの利用開始の際に設計しておくのが望ましいですが、すでにそれが困難な場合には、下流側でデータ追記をするか、データ変換をかけることになります。

電子契約以外に紙で締結する契約書がある場合

電子契約を導入したとしても、新規締結の30%~50%が電子で残りは依然として紙で締結する、という会社が多いのが実情です。
また、当然、過去に締結した契約書は紙で残っていることが大半です。

この状態は、短期的には変えられないことが多いでしょう。

これを解決するためには、紙の契約書を電子契約のデータベース側に統合させるということになるでしょう。

解決策: 紙で締結した契約書をPDF化して、電子契約のデータベースに統合させる

紙で締結した契約書は、随時、スキャニングしてPDFを作成し、電子契約のデータベースにアップロードします。併せて、それぞれの契約書の管理項目(タイトル、相手先、締結日等)を入力していきます。

電子契約のサービスや利用プランによっては、アップロードができないケースがあるので、その場合は③のような下流データベースを利用することになります。

注意すべき点は、新規発生分をタイムリーにデータベース登録していくための体制を整備すること、過去分をデータベースに取り込む範囲は、必要に応じて絞ることです。

あくまで目的は「契約を管理できる状態にすること」なので、「キレイなデータベースを作ること」が目的にならないようにしてください。

一般的には、過去分の取込範囲は、直近契約書だけに絞ったり、相手先で絞ったりするケースが多いです。

これらの対応をしていけば、紙契約書を含むすべての契約が同じデータベースに統合されて、精度の高い契約管理をすることが可能となります。

契約管理データベースの統合作業をもっと楽にするには

ここまで記載してきた「契約管理データベースの統合」ですが、実際にやろうとすると契約管理担当者に負担がかかります。

ダウンロードして統合用データベースにアップロードしたり、管理項目の入力をしたり、紙契約書のスキャニングをしたり…。

契約管理担当者を専任で配置しているケースは少ないでしょうから、そういった作業のたびに他の業務を止めて対応することになり非効率です。

この問題は、2つのことを実施すれば解消することが可能です。

電子契約と連携しているクラウド形式の契約書管理システムを利用する

クラウド形式の契約書管理システムのなかには、電子契約で契約を締結すると自動的にAPI連携によりデータが反映されるサービスがあります。
これを利用すれば、契約締結の都度、下流に位置するデータベースに保存し直す必要から解放されます。

具体的なサービスについては、過去の記事にまとめていますので参考にしてください。
>>> 【売る側の人が教える】おすすめの契約書管理クラウドシステム8つ

スキャニング・管理項目データ作成とクラウド契約書管理システムへのアップロード作業を委託する

紙契約書のスキャニング作業や契約書文言からの管理項目データの抽出・データ化作業はもちろん、クラウド契約書管理システムへのアップロードまで、外部の会社に委託することができます。

委託先選定のポイントは、契約書の取扱いに慣れている専門ベンダーであるかどうか。

小規模な「スキャニング会社」「データ入力会社」だと本当に契約書を取り扱ってもらっても品質やセキュリティ面で安心できるのか、という心配があります。
知らないところで再委託されている、という心配もあります。

契約書を取り扱っている専門の会社であれば、安心して委託することが可能です。
最近は、倉庫業をメインとする会社も専門サービスを立ち上げて、この契約書の領域に取り組んでいる会社が多くあります。
会社としての信頼性も考えると、大手の倉庫会社に依頼するというのも一案です。

代表的な会社としては、日本通運系のNXワンビシアーカイブズ、三井倉庫ビジネスパートナーズ、鈴与、寺田倉庫などがあります。

>>> NXワンビシアーカイブズのサービスページ
>>> 三井倉庫ビジネスパートナーズのサービスページ
>>> 鈴与のサービスページ
>>> 寺田倉庫のサービスページ

まとめ

まとめ

●契約書が見つかりにくくなっている原因は、
 電子契約の急速な普及によって契約書管理データベースが分散されてしまっているから
●問題の解決方針は、
 分散された契約管理データベースを統合すること
●管理データベース統合のためには、次のことを実施するとよい
 <電子契約の利用において>
  -自社の社員・メールアドレスは、すべて電子契約のユーザーとして登録すること
  -必ず特定の社員かグループアドレスを承認プロセスに入れる運用とすること
 <データベース統合の方法>
  -下流で電子契約と紙契約書を統合するデータベースをつくること
●契約管理データベースの統合作業を楽にするには、次ことを検討するとよい
  -電子契約と連動している契約書管理クラウドシステムを利用する
  -契約書を専門的に扱っている会社への関連作業を委託する

さいごに

「具体的にどう検討を進めていけばいいか、分からない」というお悩みの方には、ご希望があればいつでも無償でお手伝いすることが可能です。
下記のお問い合わせフォームからご相談ください。

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