苦手克服! 中小企業診断士一次試験-経営法務攻略のコツ
目次
苦手科目ナバーワン-経営法務の攻略法(この記事から分かること)
この記事では、中小企業診断士の一次試験科目のなかで「苦手な科目ナンバーワン」にあげられることが多い経営法務について、その攻略法を記載しています。
筆者は一次試験受験4回・二次試験受験3回で合格したのですが、その長い独学の受験経験のなかで実は経営法務だけは一度も落としたことがありません。多くの方が「苦手だ」というのに、なぜ自分は得意にしていたのか、その違いを考えながら記事にしてみました。
経営法務攻略のコツ3つ
最初に結論からいうと、経営法務攻略のコツは3つです。
①合格に向けて60点とるための戦略を明確にすること(深入りしすぎないこと)
②過去問を中心に学習して、そこから必要な範囲で知識を補充すること
③暗記するときは、必ず理屈とセットで覚えること(法には趣旨というものがある)
この3つができれば、選択肢単位で確実に判断できる量が増えていきます。そうすると、すべての選択肢を明確に判断できなくとも、消去法で正解にたどり着ける可能性が飛躍的に高まります。
経営法務の試験内容
さて詳しい内容に入る前に、経営法務の試験内容についてざっと確認しておきます。
令和2年度の試験をみてみます。「ガリガリザウルス」が衝撃的でしたが。
全体的には25マークで、単純平均すると1マークあたり平均4点です。15マーク正解できれば60点とれる計算になります。ここが目指すべきところです。
その内容の分布は以下のようになっています。
まず、民法に関する問題が9マーク。
内容的には、改正民法の内容、相続の限定承認、相隣関係、時効、詐害行為取消権、民事保証、約款が2マーク、請負と委任の比較となっています。
次に、会社法に関する問題が6マーク。
内容的には、設立、取締役会議事録、合併、取締役会の構成、監査の体制、自己株式となっています。
そして、知的財産権が8マーク。
内容的には、特許・意匠・商標・実用新案の横断比較が3マーク、著作権が2マーク、不正競争防止法が2マーク、特許権が1マークとなっています。
最後に、英文契約が2マークです。
合格に向けて60点をとる戦略
さて、皆さんならばどうやって15マーク取りますか?
「一番マーク数が多いのは民法だから、やっぱり民法を完璧にしなければ」と思ったとしたら、それは残念ながら合格から遠ざかる考えだと言わざるを得ないでしょう。
民法と一口に言っても、総則から始まり物件・債権・家族法に至るまで範囲は極めて多岐にわたります。司法試験の短答式においても一番学習時間を多く取るべき科目なのです。
会社法も同様です。設立、株式、会社の機関、組織変更など範囲が広いのは同じです。
そこで最もおすすめなのが、知的財産権の問題を確実に解けるようにすることです。
たしかに、知的財産権も突き詰めていけば奥が深いことに変わりはありません。しかし、中小企業診断士試験で求められる範囲は条文に書かれている基礎的な内容です。特許権、意匠権、商標権、実用新案権、著作権の比較表を作って覚えてしまえば、得点源になりやすいといえます。
※知的財産権の分野で覚えるべき知識とその覚え方については、別の記事で掲載します。
知的財産権で8マーク押さえたら、残りは7マークです。
民法と会社法から7マーク取れるようにするには、どうすれば良いでしょうか?
ここでも戦略は「絞ること」です。
民法も会社法も範囲が広いとはいいながら、出題には偏りがあるように思います。なぜならば、中小企業診断士試験は、中小企業の経営者をサポートすることが役割だからです。その役割を果たすのに必要な知識について、出題者側も意識をしていると考えてよいでしょう。
民法についていうと、債権と相続+改正論点です。物件は保証に絡んで登場する程度の印象です。
債権については、民法の基本を理解していかないと理解しにくいのでここは少し頑張る必要があると思います。一方で、相続は明らかに事業承継が意識されています。倒産する事業者よりも後継者不足等で廃業する事業者の方が多いなかで、相続者への事業の承継やM&Aによる外部承継などをサポートする役割が期待されているのです。相続・遺言などは民法の中では暗記で対応できる分野なので、ある程度直前に一気に知識を詰めても良いと思います。
改正論点については、やはりクライアントから聞かれる部分なんでしょうね。大きな改正があったばかりなので、ここは数年続く可能性が高いと思います。
ちなみに、相隣関係などは民法の中でもかなりマイナーな話なので、知らなくても気にする必要はありません。合格してから民法の条文を見れば理解できる話です。
これで民法は半分取れるようにすれば、民法だけで5マーク。知的財産権と合わせて13マーク押さえられます。
残りは2マークです。
残り8マーク文の問題についてそれぞれ4つの選択肢から選ぶだけなので、確率的には2マーク取れる計算になります。
ただ、これだと少し不安なので、会社法についても点を押さえにかかります。
会社法についていうと、会社の機関を押さえておくのがおすすめです。理由は、パターンが限られるからです。どういう場合に取締役会を設置しなければならないのか、どういう場合に監査役を設置しなければならないのか、などのいくつかの点を押さえておけばかなりの問題に対応することができます。
過去問から離れない学習が大事
ここからは、具体的な学習の仕方です。
結論から言うと、試験に出る知識を試験に出る範囲で学習することです。
いきなり参考書を読み始めるのはやめた方がいいです。
その理由は、試験に出ないことがたくさん書いてあるからです。参考書という性格上、全体を網羅する必要があり、細かいことも書かざるを得ません。高校の世界史の教科書だと、必ず最初に「クロマニヨン人」とか出てきますがこれが試験に出たことを見たことがありません。
また、必要以上に細かいことが書いてあることもあります。正確を期すために例外的なことも細かく記載されていることがありますが、その例外がどれだけ試験にとって大事なのかは別問題です。
では、どうやって試験に出ることを、試験に出る範囲で学習するかというと、それは過去問です。
とにかく過去問を徹底して実施するようにして、自分の知らない知識が出てきたら解説を読んで理解・納得するということを繰り返し、次にその選択肢を読んだときには確実に理解できるようにすることです。
そのため、過去問集はできるだけ解説が詳しく書かれているものを購入してください。ただし、解説を読むのは分からない問題・間違えた問題だけです。すべてを読むのは時間の無駄です。
過去問5年分を繰り返し解けば、出題される知識が身についてきます。
もし、過去問だけでは物足りない場合は模試や問題集に手を出しても良いですが、正直そこまでする必要はないと思います。
趣旨とセットで理解・納得すると覚えられる
学習を進めていくと、色々と覚えなければならないことが出てきます。
この際のポイントは、闇雲に暗記するのではなく法の趣旨とセットで理解・納得するということです。そうすれば、無理に暗記しようとしなくても自然と覚えられます。本来の法の趣旨でなくとも、自分なりに納得しやすい「理屈」とセットで理解するようにしましょう。
たとえば、意匠権の存続期間は「出願日から25年」です。他の知的財産権よりも長いですね。これはなぜなのか、ということを自分なりに納得することなんです。私は、「意匠権というのは建物の外観などもあって、建物は何十年も存続するものだから権利を長く守ってあげないと不都合が生じる」と理解しました。
このように、できるだけ理屈とともに納得して理解しておくと、試験当日の現場において頭の中で混乱することなくスッと知識が出てきます。丸暗記もせざるを得ない場合があると思いますが、最後の最後にしましょう。
まとめ
最後に、この記事のまとめをもう一度しておきます。
経営法務攻略のコツは3つです。
①合格に向けて60点とるための戦略を明確にすること(深入りしすぎないこと)
②過去問を中心に学習して、そこから必要な範囲で知識を補充すること
③暗記するときは、必ず理屈とセットで覚えること(法には趣旨というものがある)
今後、具体的に覚えるべき知識などもアップしていきたいと思います。