中小企業診断士 一次試験直前対策ノート(中小企業経営・政策①)

2021年8月1日

(撮影:winston)

この投稿で分かること

この投稿では、中小企業診断士試験の一次試験のうち「中小企業経営・政策」科目の合格のために必要な知識、とくに中小企業政策に関して必要な知識を記載しました。
内容としては、参考書・問題集・youtubeの動画などを参考にしながら筆者が受験にあたってまとめたノートです。筆者は試験直前期には過去問とこのノートを見返すだけの勉強をしていました。これから受験する方の手助けになればと思い、ほぼそのままの内容を記載させていただきました。

勉強の仕方についての留意点

「中小企業経営・政策」は、①大きく分けると補助金や税制措置などの中小企業が利用できる各種施策と、②直近の中小企業白書の内容に分かれています。
以下に記載する内容は①について、2020年の受験にあたって整理したものです。制度が変更している場合もあろうかと思いますが、2020年段階の知識として整理をさせていただきます。
その点についてはご注意をお願いします。

中小企業政策の知識メモ

①中小企業の定義

「中小企業」
製造業 資本金3億円以下 または 従業員300名以下
卸売業 資本金1億円以下 または 従業員100名以下
小売業 資本金5,000万円以下 または 従業員50名以下
サービス業 資本金5,000万円以下 または 従業員100名以下

「小規模企業」
製造業 従業員20名以下
商業・サービス業 従業員5名以下

②中小企業基本法の基本理念

(基本理念)
法3条1項-中小企業の役割
多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、
a)新たな事業の創出
b)就業の機会の増大
c)市場における競争の促進
d)地域における経済の活性化
多様で活力ある中小企業の成長・発展を実現するため、独立した中小企業者の自主的な努力を前提としている。

法3条2項-小規模企業の役割
(範囲が狭い)
地域の特色を活かした事業活動、就業の機会の提供により、
地域における経済の安定、地域住民の生活の向上、交流の促進を実現。
(ベンチャー的)
創造的な事業活動により、
新たな産業を創出し、我が国の将来の経済・社会の発展に寄与。

(基本方針)法5条
経営の革新
および創業の促進効率的な事業活動の促進を図ること
中小企業の経営基盤の強化を図ること(経営資源の確保、取引の適正化により)
経済的社会的環境の変化への適用の円滑化を図ること
資金供給の円滑化および自己資本の充実を図ること

③小規模企業基本法

99%超が中小企業で、80%超が小規模事業者。
小規模企業を中心に据えた施策を体系化した法律。

「小企業者」:概ね常時使用する従業員が5人以下

事業の持続的発展を目的に位置づけている。(大きく発展させることではない)
技術・ノウハウの向上、安定的な雇用の維持。

内閣が5年間の「小規模基本計画」を定めることになっている。

④中小企業等経営強化法(経営革新計画)

(スキーム)
中小企業者が単独またはグループで、
「経営革新計画」を策定、
都道府県知事(単一都道府県内の場合)または国(県をまたぐ場合)の承認を受けて、
経営革新計画を実行する。

(計画の内容)
既存事業とは異なる「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を達成することが必要。

「新事業活動」とは、以下のいずれかにあたること。
a)新商品の開発または生産
b)新役務の開発または提供
c)商品の新たな生産または販売の方式の導入
d)役務の新たな提供の方式の導入
※自社にとって「新た」ならばOK。ただし同等企業にすでに相当程度に普及していただNG。

「経営の相当程度の向上」の基準
3年計画 付加価値伸び率9%以上 + 経常利益伸び率3%以上
4年計画 付加価値伸び率12%以上 + 経常利益伸び率4%以上
5年計画 付加価値伸び率15%以上 + 経常利益伸び率5%以上
※付加価値=営業利益+人件費+減価償却費

(支援措置)
信用保証の特例、政策金融公庫の特別利率融資、高度化融資制度等
特許料の減免:審査請求料、1~10年目の特許料が半額
支援を受けるには個別の審査が必要(計画通れば自動ではない)

⑤中小企業等経営強化法(新連携)

(概要)
異分野の事業者が有機的に連携し、
その経営資源を有効に組み合わせて活動を行うことで、
新たな事業分野の開拓を図ることが目的
※経営資源の乏しい中小企業が互いに強みを持ち寄って付加価値を高める。

(新連携の要件)
「異分野の事業者が有機的に連携」
異なる事業分野2以上の中小企業が参加すること
同業種が一緒になるなら組合制度
他に大学や大企業、NPO、組合がいてもOKだが、中小企業の貢献度が半分以下ではNG。
「新たな事業活動」
新商品の開発または生産
新役務の開発または提供
商品の新たな生産または販売の方式の導入
役務の新たな提供の方式の導入
※地域や業種を勘案して新しい事業であることが必要。ただし、その地域・業種で相当程度に普及しているものや研究開発段階にとどまっているものはNG
「新たな事業分野の開拓」
市場において事業を成立させること。

(スキーム)
国(経済産業局)に申請して認定を受ける。

(その他)
計画期間は3年~5年(経営革新計画と同じ)
10年以内に融資返済、投資回収が可能なこと

⑥中小企業等経営強化法(経営力向上計画)

(概要)
経営革新計画、新連携は新しい事業活動の支援だが、
経営力向上計画は労働生産性の向上によって、中小企業の経営資源を強化することが目的。
人材育成、コスト管理等のマネジメント向上、設備投資など、自社の経営力を向上させるために実施する計画。

(スキーム等)
中小企業、小規模事業者、中堅企業(資本金10億円以下または2000人以下)にて「経営力向上計画」を策定
※ここで「中堅企業」という概念が出てくるので「中小企業経営計画」になっている。
国(事業分野別の主務大臣)が認定する

「労働生産性の向上」の基準
3年計画 1%以上
4年計画 1.5%以上
5年計画 2%以上
※労働生産性=付加価値÷労働投入量

⑦中小企業地域資源活用促進法

(概要)
地域の強みである鉱工業品、農林水産品、観光資源等の地域産業資源商品・農産品そのもののほか鉱工業品をつくる技術も対象)を活用して、商品・サービスの開発・販路開拓に取り組む中小企業に対する支援を行う。

(スキーム等)
中小企業が地域産業資源活用事業計画を策定する。
都道府県を通じて国に申請(地域資源なので都道府県が窓口)
経済産業局等が承認
試作・展示会、設備投資などの支援、地域団体商標(「夕張メロン」的なもの)の登録料等の減免(半額)

NPO法人等が計画を策定して中小企業を支援する場合は、「地域産業資源活用支援事業計画」となる。
この場合は窓口は直接国に申請。

⑧農商工等連携促進法

(概要)
中小企業と農林業業者が
互いの経営資源を有機的に連携して
共同で新たな商品・サービスの開発を行い、需要を開拓する事業

(スキーム等)
中小企業等と農林漁業者が一緒に「農商工等連携事業計画」を策定
※農林漁業者がいれば中小企業は1社でも可
国に申請して主務大臣が認定する
試作品開発、展示会費用の補助、補助率3分の2以内

NPO法人が策定する場合は「農商工等連携支援事業計画」となり国が認定する。

⑨中小ものづくり高度化法

(概要)
製造業を支援して国際競争力を強化することが目的
ものづくりを支える中小企業が
我が国製造業の国際競争力の強化や新たな事業の創出に必要不可欠であることに鑑み
中小企業の担うものづくり基盤技術の研究開発及びその成果の利用支援を行う

(スキーム等)
国(経済産業大臣)が「ものづくり基盤技術」を指定する。(デザイン技術、情報処理技術等)
川下ユーザー企業(大企業)のニーズを勘案して指定する。(中小企業が川上)
中小企業が特定研究開発等計画を策定して国へ申請
各種支援策が受けられる
代表的なものは戦略的基盤技術高度化事業
 補助金は初年度4,500万円以下、補助率3分の2以下、事業期間2~3年、交付元は経済産業局

⑩中小企業組合制度

⑪高度化事業

(概要)
中小企業者が、共同して、
経営基盤の強化、事業基盤の強化、事業環境の改善を図るため、
工場団地、ショッピングセンターなどを建設する事業に必要な資金を
都道府県と中小企業基盤整備機構が財源を出し合い
アドバイスを行いながら長期・低利で融資する事業。(カネもクチも出すハンズオン)

(種類)
a)中小企業者が事業協同組合などを設立して、共同連携して経営基盤の強化を行う方式
集団化事業:騒音問題など公害問題の解決のために、集団移転する事業
集積区域整備事業:商店街の魅力・利便性向上のために、商店街にアーケードや駐車場をつくる事業
施設集約化事業:集客力や販売力の向上のために、ショッピングセンターを建設する事業
共同施設事業:事業の効率化や取引先の拡大のために、共同物流センターや加工場・倉庫を建設する事業

b)地方公共団体と地元産業界が協力して第三セクターで施設を整備する方式
地域産業創造基盤整備事業:起業家を支援する取り組み
商店街整備支援事業:多目的ホールや駐車場、共同店舗 ※「支援」は行政がやるから

(貸付条件)
A方式:1つの都道府県で実施 → 都道府県が貸付
B方式:2つ以上の都道府県にまたがって実施 → 中小企業基盤整備機構が貸付

貸付限度:なし(大規模事業なので)
貸付割合:原則80%以内
貸付対象:設備資金のみ(運転資金は含まない)
貸付期間:20年以内(うち据置3年以内)
担保・保証人:必要

⑫有限責任事業組合(LLP)

組合契約が基礎なので法人格はない
組合員は出資額の限度で責任を負う有限責任
内部自治は自由度が高い
組合契約書によって組織構造の柔軟設定可能
出資比率と異なる損益配分、議決権配分が可能
LLP自体には課税されず構成員に分配される利益に課税される(パススルー課税)
※技術研究組合は法人格あり、法人課税

⑬下請法(下請代金支払遅延防止法)

独禁法の特別法で、趣旨は下請事業者の保護

(法の適用範囲となる取引)
a)物品製造・修理委託・政令で定めるもの(プログラム作成等)
親事業者の資本金3億円超 → 下請事業者の資本金3億円以下
親事業者の資本金1千万円以上3億円以下 → 下請事業者の資本金1千万円以下

b)情報成果物作成・役務提供
同5千万円超 → 同5千万円以下
同1千万円以上5千万円以下 → 同1千万円以下

(親事業者の義務)
発注書面の交付義務:委託後直ちに、内容・金額・支払期日・支払方法を記載
発注書面の作成・保存義務:委託後に作成して2年間保存する義務
支払期日を定める義務:給付を受領した日から60日以内でできるだけ短く
遅延利息の支払い義務:年率14.6%

(下請かけこみ寺)
無料で相談員や弁護士に相談できる
本部は全国中小企業振興機関協会
裁判外紛争解決手続(ADR)が利用できる

⑭共済制度

⑮小規模企業者経営改善資金(マル経融資)

無担保・無保証・低利(not無利子)の融資制度
商工会議所の推薦にもとづき日本政策金融公庫が融資

対象:従業員20人以下(商業サービスは5人以下)
融資限度:2,000万円
返済期間:設備資金10年以内据置2年以内)、運転資金7年以内据置1年以内)
条件:直近1年以上同一地区で事業を行い、商工会議所の経営指導を6か月以上受けている、税金完納

⑯新創業融資制度

中小企業等経営強化法の創業支援とは別。
ビジネスプランの妥当性審査のみ

これから創業する者、税務申告を2期終えていない者(創業後もOK)
事業計画の審査を通じて
無担保・無保証で日本政策金融公庫から融資を受けられる。
金利はむしろ高い(実績もなく貸す側のリスク高いので)

雇用の創出を伴う事業を始める者であること(ただし1,000万円以下ならば雇用創出不要)
税務申告を1期終えていない者は、創業時において10分の1の自己資金が必要
貸付限度3,000万円(運転資金1,500万円) ←マル経より多め

⑰中小企業等経営強化法(創業支援)

これから事業を開始しようとする個人または創業5年以内の事業者
中小企業信用保険、中小企業投資育成株式会社の特例活用による融資支援等

⑱女性・若者・シニア起業家支援資金

女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)であること
新たに事業を始める者または事業開始後7年以内
日本政策金融公庫が優遇金利で融資

⑲中小企業税制

(対象)
資本金1億円以下の法人事業者(業種・従業員数関係なし)
(軽減内容)
年所得800万円以下は法人税軽減税率が適用(800万円以下の部分は15%、800万円以上の部分は23.2%)
年800万円までの交際費または支出した飲食費の50%が全額損金算入可能
(エンジェル税制)
ベンチャー企業に投資した個人投資家に対する優遇措置
投資時点、売却時点で優遇あり(売却損との相殺、翌年以降3年間の損失持越し)
(所得拡大促進税制)
青色申告を提出する個人または法人
従業員の所得を拡大する際に増加額の一定割合を税額から控除
(中小企業投資促進税制)
青色申告の個人事業主または資本金1億円以下の法人
投資(不動産、中古はNG)の際、特別償却または税額控除
(事業承継税制)
非上場の中小企業
非上場株式について80%に対応する相続税、贈与税の全額を猶予する(not免除)

⑳JAPANブランド育成支援

中小企業の海外販路開拓
海外展示会等の取り組みを支援、戦略策定支援
支援対象は商工会、商工会議所、組合、NPO法人および中小企業者(4者以上)

a)戦略策定段階の支援
市場調査、セミナー等
3分の2補助、上限200万円、1年間のみ
b)ブランド確立段階の支援
専門家招聘、新商品開発、展示会出展等
3分の2補助、上限2,000万円、最大3年間

㉑小規模企業持続化補助金

対象:小規模企業者(ただし宿泊・娯楽は20人以下)
商工会議所と一体となって経営計画を策定
販路開拓、生産性向上に取り組む費用を補助
3分の2補助、上限50万円

㉒その他

(戦略的CIO育成支援)
中小企業基盤整備機構が、専門家を有料で派遣(6か月から1年間)
企業内のCIO育成を支援

(支援機関のちがい)
中小企業支援センター:中小企業支援法にもとづく指定法人
中小企業再生支援協議会:産業競争力強化法にもとづく機関、都道府県ごとに設置
事業引継支援センター:事業のM&Aマッチング支援、都道府県に設置

おわりに

以上の知識は、筆者が2020年の試験に臨むにあたって整理した情報です。
その後の法改正などはフォローしていないでの注意してください。
なお、中小企業経営政策の科目としては、これとは別に中小企業白書から情報を整理することが必要です。
白書は中小企業庁のページから確認できますので、こちらを参照してください。