トップセールスに頼らない! BtoB営業の体制構築(KPIにもとづく営業プロセス設計)
目次
BtoB営業の体制構築方法(この記事でわかること)
「BtoB営業の体制を再構築しなければいけないが、何から手をつけてよいか分からない」
「昔ながらの営業経験が豊富な経営層に、現在の営業の実態を理解してもらえない」
そんな悩みはありませんか?
この記事は、これからBtoB商材の営業活動を構築していこうとするマネージャーの方に向けて書いています。
この記事では、従来的な人的営業だけに光が当たりがちなBtoB商材の営業活動について、それをどうやって組織的な仕組みとして構築をしていけばよいか、実際に現在進行形で構築に取り組んでいる筆者の立場から、その具体的な手法、実態や悩みを記載しています。最終的にはインサイドセールスの構築・運用後の成果なども記載していく予定ですが、本記事ではその準備段階の分析を中心に記載をしています。
最初にすべきは、自身のビジネスのボトルネック分析
最近、「The Model」のような営業体制を構築することが、一つの流行りになっています。
※「The Model」の詳しい内容については、こちらをご参照ください。
「では当社でもTheModel体制に取り組もう」とか、「早速インサイドセールスを構築しよう」と考える方も多いと思いますが、少し冷静に立ち止まってみましょう。
その前に、まず考えるべきことがあります。何だと思いますか?
それは、「あなたのビジネスにおけるボトルネックは何ですか?」という問いに答えることです。
これを分析せずに新しいことに取り組むことは、例えていえば医者が診察をせずに薬を出すようなもので、非常に危険なことだと思います。
「The Model」もインサイドセールスも目的ではなくて手段です。問題のあるところを解消するために何が必要なのか、という発想でアプローチすることを強くお薦めします。
では、自身のビジネスのボトルネックをどうやって把握するか。
そのためには、ゴールとなるサービスの導入・商品の納品から逆算して、以下の数値を把握する必要があります。
①成約件数 と 成約客単価
②案件成約率(成約件数 ÷ 案件件数)
③案件化率(案件件数 ÷ 商談件数)
④商談化率(商談件数 ÷ リード件数)
⑤リード件数
これらの数値を把握できないようであれば、色々と取り組む前にまずはこの数値を把握できる状態を作ることが先決問題でしょう。
この数値が把握できたら、そのどこに問題があるのかを分析します。
商材や会社のポジションによって状況が異なるので、一概に「何パーセント以上であればOK」という基準はありません。②や③であれば個別にヒアリングした情報を残しておくか、営業マンにヒアリングをすれば、ある程度どこに課題があるのかが把握できるでしょう。この判断をするにあたっては、現状どういう策を打っているのかという事実も大事です。数値が悪いけれども施策を打ち尽くしていることもあれば、数値は良いけれども施策をさらに打つ予知があることもあります。それらも含めて考慮して、ボトルネックにあたるかどうかを判断すべきです。
要するに「ここの数字はもっと良くすることができるのではないか」ということが大事で、そう思える部分こそがボトルネックにあたると考えて良いでしょう。
<筆者の組織における分析例>
筆者の組織においては、以下のように把握・分析をしました。
①成約件数と成約単価は、詳細の記載は省略しますが、単価に問題ないものの、成約件数が思ったほどではない状況でした。
②案件成約率は16%でした。この数値自体は悪くないものの、トップセールスの数値とそれ以外のメンバーの数値に開きがあることが分かりました。そのため、ここは手を打つべき問題点であると認識しました。
③案件化率は26%でした。この数値も最初は大きな問題ではないと思いました。しかし発生ルート別に調べてみると、自社ウェブサイトからの問い合わせが40%程度、展示会からの商談が30%、ウェビナーからの商談が10%となっていることが分かりました。他社にも聞いてみると「普通はウェブサイトからの問い合わせであれば案件化率は70%以上ですよ」との話があり、ここに問題があるものと認識をしました。
④商談化率は筆者の組織の場合は「ヒアリングができた率」として把握しました。これは概ね80%くらい。ここは問題ないものと認識をしました。
⑤リード件数は現状の件数が多いのか、少ないのかが判断つかないので、いったんは件数を把握しただけで評価は保留をしました。
そのボトルネックはなぜ生じているのか?
次に考えるべきことは、把握したボトルネックがなぜ生じているのかという点です。
ボトルネックが生じる原因は、概ね以下に大別されるのではないでしょうか。
○商品・サービスの魅力を伝えられていない、または、魅力に感じてくれる人に向けて発信されていない
どんな商品・サービスにも「強み」「セールスポイント」「強調したい点」があるでしょう。それをしっかりと伝えられていますか? ウェブサイト、ちらし、提案資料などに記載されていますか? 営業マンがコンタクトの際に説明する内容はウェブサイトにも記載されていますか?
また、そういった強みは必ずしも万人が必要とするものではないはずです。例えばオムツをセールスしようと思えば、赤ちゃんのためにオムツを選ぶご両親に向けて発信しないといけません。その情報を伝えたい人に向けて発信し、その人が見たら魅力に感じてくれるような内容にしていますか?
ここは非常に基本的なことですが、できていないことが多いのではないかと思います。
○個人任せになっていて手法の標準化・スキルの水平化がなされていない
営業組織の究極は、誰がやっても同じ結果がでるような状態です。完璧にその状態にすることは不可能ですが、そこに近づける努力をしていますか? トップセールスがなぜ良い結果を出せているのかを把握しましょう。そして、「これだ」と思うことを見つけたら、それをみんなでやってみましょう。
○次のステップが明確になっていない、または、次のステップとの間のギャップが大きすぎる
営業活動は、成約というゴールに向けて一つずつ駒を進めていくゲームです。駒の進め先が明確になっていますか? 実はメンバーによってその認識が違っていたりしませんか? また、リード獲得後の次のステップがいきなりトライアル利用だったり、ギャップが大きすぎる状態になっていませんか? 営業プロセスを少し細かく設計して次の目標を明確にしておけば、営業マンもやりやすいし管理もしやすくなります。
○プロセス途中の必要な活動量・成果量が明確になっていない
最終的な売上・利益の管理はどこの組織でも必ず実施しているでしょう。しかし、その途中のプロセスの活動量・成果量としてどれくらいが必要ななのか明確になっていますか? 計画した売上・利益をあげるためには今期何件の案件を出し、何件のリードを獲得すればよいか明確になっていますか? ウェブサイトからの問い合わせが増えたと一喜一憂しても、それが何件になれば計画達成できるのかが理解できていないと成功なのか失敗なのかが分かりません。プロセスをしっかり設計することはもの凄く大事なことです。
○そもそも活動量が足りていない、またその背景としてリソースが足りていない
必要な成果を出すために必要な活動がなされていますか? 活動はしているが成果が出ていないのであれば、それがなぜなのか分析・トライして試行錯誤を繰り返すことになりますが、そもそも必要な活動を行っていないケースもあります。こういった現象は多くの場合、プロセスの最初の部分、リードを出す活動やリードを商談化させる活動において発生します。すぐに炎上しないからです。あなたの組織では、これらの活動が放置されていませんか?
もしそうだとしてら、もう一歩踏み込んでなぜ放置されているのでしょうか。理由は2つでしょう。一つは、リード獲得や商談化させる活動が組織内で評価されないこと。もう一つは、人数が限られていて対応リソースを割けないこと。ここはマネジメントが手を打つべき点です。
<筆者の組織における分析例>
筆者の組織においては、以下のように分析をしました。
②案件成約率がメンバーによって大きく異なっています。この原因は、経験の差が直接的な理由なのですが、それが放置されていることが真因であることが分かりました。トップセールスは自身の経験をもとにどんどん工夫を繰り返して成果を高めている一方で、他のメンバーはそこから学ぶことをせずに受け身の状態です。営業マネージャーもそれを放置していて、ほぼ個人任せの状態となっています。ここに改善予知があることが分かりました。
③案件化率は、すでに記載したように自社ウェブサイトからの問い合わせの場合に案件化率をさらに高めることができるものと分析しました。そしてこれを営業メンバー個人別に調べてみると、上記の案件成約率と同様に個人ごとの差異が大きいことが分かりました。確認してみると、定めたトークスクリプト・標準資料があるものの、トップセールスは自分で工夫してお客様からヒアリングできた内容を自分なりに整理してまとめた資料をつくって標準資料にプラスしていることが分かりました。ここは改善予知がありそうです。
⑤リード件数は、この後に記載しますが実は大きな問題のあるポイントでした。必要な数のリードが取れていないことはもちろん、現段階で必要リードに足りているかどうかが把握されておらず、そのため期初に定めた活動や場当たり的な追加活動はするもののリード獲得件数の目標と連動していない状態です。ここも大きな改善のポイントです。
営業プロセスごとの目標数値を設計する(KPIの設計)
ここまで来れば、営業体制の構築準備はあと少しです。
やるべきことは、目標としている新規獲得売上・利益を実現するための営業プロセスを設計することです。
具体的に何をやるべきかというと、ここまでに準備ができていれば難しいことはありません。
必要な成約件数から逆算して、そのために必要な中間プロセスの件数・率を設定するだけです。
ここまでの準備で、どこの数値に問題があって改善予知があるのかを分析してきました。
それが分かっていれば、あとは数値を埋めていくだけです。
もし、扱っている商材ごとに特性の違いがあれば、ここは商材別に設定することをお薦めします。商材が違えば成約率も違うかもしれませんし、商材ごとにリードを獲得する活動も違うことが想定されるからです。
<筆者の組織における設計例>
A商材とB商材で歩留まり・ターゲットに違いがあることから、別々に設計をしました。数値については、トップセールスの数値にみんなで追いつくことを前提に設定しました。
営業プロセス設計を実現するために
そして、ようやくここからどうやってこの数字を達成するかを考える必要があります。
その多くの組織において直面することは、「必要なリード件数がすごく多くなってしまった」という状態ではないでしょうか。途中プロセスの歩留率は実績をベースとして設計することが多いでしょうから、そこまで非現実的な数値にはなっていないでしょう。しかし、それを前提とすると商談の数、リードの数が圧倒的に足りない状態に気づくのではないかと思います。
そこで、考えるべきはリードを出すための活動。つまり、WEBマーケの実施による自社ウェブサイトからの問い合わせ促進、展示会への複数回出展、ウェビナーの高頻度実施が必要になるでしょう。
また、商談を出すためには、既存リードを含めて獲得したリードへの確実なコンタクトが必要になるでしょう。ここに割くべきリソースが不足するようであれば、外部組織にアウトソーシングすることが必要となります。
また、実際の管理上のことをいうと、営業マンがそれぞれ最初から最後まで担当する役割分担にすると、最初の方のリードを出す活動や商談化する活動が疎かになりがちです。だからこそ、その役割を明確にして組織に織り込んでおく必要が生じます。それがインサイドセールス部隊の構築です。
・・とここから先は次回以降にしていきますが、今回一番伝えたかったことは、こういった分析によって自組織に必要な施策を打つべきだということです。WEBマーケの強化、インサイドセールスの構築などは手段であって目的ではありません。
こういった順を追った活動設計こそが大事なのだと思っています。